「ねえ、知ってる? あれの本当の呼び方」

ベッドの上で膝を抱えていたセレナが、テーブルの上に置かれたホッチキスを指差して私に問いかけた。

「ホッチキスだろ? 誰でもそう呼んでるよ」
「ぷぷっ、甘いわね! それは通称。本当はステープラーっていうの。かっこいいでしょ?」

セレナは得意げに胸を張り、金色の髪を揺らして私をじっと見つめる。陽の光を浴びた瞳が、いたずらっぽく輝いている。

「またそれか。君は本当、どうでもいい知識を仕入れるのが好きだよね」
「どうでもよくないわ! 貴方も今日からステープラーって呼ぶこと。私が決めたの」

彼女はそう言い捨てると、指先で器用にその文房具を弄んだ。

「はい、貴方の書類にステープラーをお届けしますー」
「おい、せめて普通に渡せよ! あと、その事務的な口調は何なんだ」

私が呆れている間に、セレナは満足そうに口角を上げる。

「いいじゃない。私が貴方の専属ステープラー配給係ってことよ。効率的でいいでしょ?」

彼女の無邪気な宣言に、私は思わず噴き出しそうになった。なぜかいつも、彼女と話していると調子が狂う。

「……はいはい。じゃあ、その配給係さん。次の資料も頼むよ」
「えへへ、素直ね。任せておいて!」

部屋に二人の笑い声が溶けていく。名前が何であれ、この陽だまりのような時間の中では、そんなことはどうでもいいことのように思えた。

呪文

入力なし

夜空さんの他の作品

夜空さんの他の作品


関連AIイラスト

新着AIイラスト

すべてを見る