2003年10月10日、日本産の最後のトキ・キンが死亡。
これにより日本産トキは絶滅することになりました。


元々トキは日本各地の農村地帯で見ることが出来る身近な鳥でした。
しかし田畑を荒らす害鳥と見做されるなど決して扱いが良かった訳ではなく、明治以降は羽毛や食肉の用途で乱獲が進んだこと&農薬による獲物の減少で急速に数を減らしていきます。
1920年代には早くも本州のトキは絶滅したとされ、佐渡島と能登半島に20数羽程度が確認されるのみとなりました。
1952年に特別天然記念物に指定されましたが、既に種の維持に必要な個体数を割込んでいた手遅れとも言える状態であり、近親交配が繰り返されるようになったことで産卵の失敗や個体の弱さなど一般的に語られやすい『虚弱体質のトキ』のイメージが形作られるようになってしまいます。


1967年に佐渡トキ保護センターが開設され、個体数12羽前後にまで減少したトキの捕獲と繁殖活動が始まります。
キンは元々人間に餌付けされて懐いていたトキであったため、センターへの導入は比較的スムーズでした。
他の捕獲個体が有機水銀中毒や環境変化のストレスで次々と死亡する中でキンは長命を保ち、遂には日本産トキ最後の一羽として名を残すことになります。
ちなみに保護の過程で1981年に佐渡島の最後の野生個体が5羽捕獲され、これをもって日本産トキは野生絶滅となりました。


なお中国のトキはこの時点では既に絶滅したとされており、後になって再発見されたものです。
中国では北京動物園がトキの保護活動を推進し、1989年には世界初の人工繁殖に成功。
佐渡トキ保護センターに贈呈された中国産トキはこの人工飼育の産物でもありました。
キンが既に高齢だったこともあり日本産トキとの交配は不発に終わりましたが、中国産トキ同士のつがいは佐渡トキ保護センターで人工繁殖に成功、その後も順調に数を増やしています。


2008年からは繁殖に成功した個体を佐渡島で放鳥する試みが始まりました。
1981年の全鳥捕獲以来、27年ぶりに日本の空にトキが戻ってきたことになります。
(なお中国産トキと日本産トキは遺伝的には殆ど差が無く、個体間の変異程度に収まるものです)
2012年には放鳥された個体同士の繁殖による卵の孵化が確認され、野生で36年ぶりのトキ誕生となりました。
これを受けて2019年発表された環境省レッドリスト2019ではトキのカテゴリが見直され、『野生絶滅』から『絶滅危惧IA類』へと変化しています。


なお2026年には佐渡から本州へと広がる野生復帰の取り組みも進展しています。
環境省は石川県羽咋市で本州初の放鳥を実施したと公表しており、(佐渡島の放鳥個体が本州へ飛来した事例は既に度々目撃されていますが)いよいよ本格的に本州でトキの野生復帰が始まったことになります。
朱鷺色に透ける翼や、飛行時に首を伸ばす独特の飛行シルエットを身近に見られるようになる日は、そう遠くないのかもしれません。

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