「お嬢様、大変です! 私の特製マドレーヌが忽然と消え去りました!」

執事のヨハンが息を切らせて豪華な部屋に駆け込んできた。

大きな赤い革張りの椅子に深く腰掛け、頭に大きなウサ耳リボンをのせ、白いフリルドレスをまとった少女アンナは、胸元のウサギのぬいぐるみを抱いたまま静かに微笑んだ。

「落ち着いて、ヨハン。慌てなくても、真実はもう目の前にあるわ」

「えっ、もう犯人が分かったのですか?」

「ええ。私の優秀な助手、ピョン吉が教えてくれたわ」

アンナは胸元に抱えた白いぬいぐるみの長い耳を優しく揺らした。

「ヨハン、あなたのエプロンの右ポケットを見てごらんなさい」

「え? あ、これは……!」

ヨハンがポケットを探ると、そこから泥のついた靴下が出てきた。

「ええと、これは今朝の洗濯物ですが……」

「そう、その靴下についた土はキッチンの勝手口近くのもの。そして、靴下からかすかに漂う甘いバターの香り……。犯人は、庭から勝手口を通って侵入したあの子よ。ねえ、ヨゼフ?」

アンナが部屋の隅に視線を送ると、ゴールデンレトリバーのヨゼフが、大きなマドレーヌをまさに口に放り込もうとした姿勢のまま、バツが悪そうにピタリと動きを止めていた。

「あっ! ヨゼフ、お前だったのか!」

アンナは自慢げにピョン吉をぎゅっと抱きしめ、椅子に深くもたれかかった。

「さあヨハン、解決のご褒美に、私とピョン吉の分のマドレーヌも焼き直してちょうだいね。温かいうちに、ここへ届けてくれると嬉しいわ」

こうして、動かざる名探偵の優雅なおやつタイムが、静かに幕を開けるのだった。

呪文

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