「……ねえ、これ本当にただの記録なの?」

金髪の少女が、赤いベレー帽を少しだけずらしてペンを止めた。彼女の肩に乗っている小さなクマのぬいぐるみが、じっとペン先を見つめている。

「ただの記録だよ。備品のリストと、昨日のクッキーの消費枚数」

私が答えると、彼女は深紅の瞳を細めて溜息をついた。

「クッキーの枚数? そんなの、私の胃袋が一番正確に把握してるわよ。数字にする必要ある?」

「備忘録だよ。ほら、君が全部食べちゃった日を特定しないと、次回の買い出しが狂うからね」

「くぅっ、なんて緻密で打算的なの! これじゃ私の可愛げが台無しね」

彼女は頬を膨らませ、再びペンを走らせ始めた。カリカリという音が静かな部屋に響く。しばらくすると、彼女は楽しそうにクスクスと笑い出した。

「どうしたんだい?」

「ふふ、これ見て。昨日食べたクッキーの数を『三枚』って書こうとしたら、手が滑って『三千枚』って書いちゃったわ」

「それは買い出しの規模が変わりすぎるよ」

「いいじゃない、三千枚あれば一生クッキーに困らないわよ。あ、またクマちゃんが冷ややかな目で見ないで!」

彼女は肩のぬいぐるみを指先でつつきながら、真っ赤なコートを翻して椅子の背もたれに寄りかかった。

「まあいいわ。三千枚のクッキーを食べる計画を立てるほうが、ずっと重要だもの」

外から差し込む陽光が、彼女の金色の髪を柔らかく照らしていた。平凡な午後は、彼女の突拍子もない空想のおかげで、少しだけ特別な色に染まっていく。

呪文

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