深夜のベッドに転がりながら、琴美は手元のバインダーを見つめて大きくため息をついた。

「うーん、このヒロイン、ここでもう一度悩ませるべきかなあ。どう思う?」

誰もいない部屋で呟いても、返事をするのは枕元の目覚まし時計の秒針だけだ。
彼女は紫色の長い髪を床面に散らし、黄色い花柄の上下セットに白いカーディガンを羽織ったまま足をぴょこぴょこと揺らしていた。
物語の展開に行き詰まり、ペンを持った手が宙を彷徨っている。

「ここで悩ませたらページ数が足りなくなるし、かといってサクッと進めたら読者に怒られそうだし……」

机の上には散らばったスマートフォンと、微かに明かりを放つデジタル時計。
窓の外には夜の静寂が広がっている。

「よし、今回は主人公に盛大にど忘れさせよう。そうすれば自然と悩みシーンも作れるはず!」

琴美は自分の名案に小さくクスリと笑うと、再びペンを走らせ始めた。

呪文

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