2026年8月19日 / 食彩探訪 / 豚ロースと万願寺とうがらしの塩麹酒蒸し御膳

蓋を取れば、ふわりと上がる湯気。その中に酒の香りと塩麹の柔らかな気配が混じる。昨日の鱧と蓮芋が冷たさを楽しむ一鉢だっただけに、今日はこの蒸気そのものがご馳走に思えてくる。

豚ロースは焼き目を付けず、酒蒸しで穏やかに火を通してある。箸で取ればしっとり柔らかく、噛むと豚肉の甘みがじわり。塩麹の塩気は角がなく、肉の旨みを一歩前へ押し出す程度に収まっている。

そこへ万願寺とうがらし。深緑の姿から想像するほど刺激的ではなく、肉の合間にかじれば青々とした香りが口の中を軽くしてくれる。この柔らかな豚肉と、万願寺とうがらしの瑞々しい歯ざわりの対比が実に心地よい。

最後にすだちをひと搾りすると印象が変わった。酒と塩麹の丸みを残しながら、柑橘の細い酸味が後口をすっと切っていく。肉料理でありながら重さを引きずらないのは、この仕上げが効いている。

冷たい料理がうれしい残暑ではあるが、冷たいものばかりでは少々疲れる。そんな日に、熱々でも濃厚でもない、蒸気で優しく温める一皿という選択肢はなかなか粋である。

次回予告――8月20日は「鯖とししとうの焼き南蛮煮御膳」。
穏やかな塩麹酒蒸しの翌日は、ぐっと輪郭を強めます。脂の乗った鯖を香ばしく焼き、ししとうとともに温かな南蛮だしへ。焼き香、脂、酸味が重なる一皿を訪ねます。

田嶋達郎

呪文

入力なし

yasai_pigmanさんの他の作品

yasai_pigmanさんの他の作品


関連AIフォト

新着AIフォト

すべてを見る