イオリはスマートフォンの画面を覗き込み、唇を少しだけ尖らせた。
「あーもう、なんで絶好のタイミングで鼻先に花びらが張り付くのよ!」

「どんまい。それも自然の悪戯だよ」

近くで散歩をしていたトモエが、木陰から苦笑交じりに声をかけた。

「トモエちゃん! ちょっと見てよ、このアングル。逆光で髪が透けて見える奇跡の一枚……になるはずだったのに!」

「その銀色の髪、どう見てもどこかの国から来たお姫様だけどね。そもそも、なんでこんな場所で自撮りを?」

「春の風を感じる撮影大会よ。でも、強風すぎて髪が顔を隠しちゃうの。まるで意思を持った髪みたい」

イオリは再び腕を高く伸ばし、カメラに向かってポーズを決める。だが、次の瞬間、ふわりと強い風が吹いて彼女の髪が大きく揺れた。

「きゃっ、またか!」

「あーあ、完全に風に翻弄されてるね」

「うう、散々ね。ねえ、もう一枚撮ってよ。今度は背景に花びらを舞い散らせるの!」

「映えを狙いすぎでしょ」

トモエは呆れながらもスマホを受け取る。カメラを構える彼女の前で、イオリは満開の木の下、誇らしげに胸を張った。

「完璧な構図を頼むわよ!」

「はいはい、銀色のお姫様」

呪文

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