2026年7月14日 / 食彩探訪 / 豚ロースと焼きピーマンの塩麹だれ御膳

七月半ばの昼。店先から入り込む熱気に重なるように、厨房から肉の焼ける音が聞こえてきた。

鉄板の上で豚ロースが脂を弾き、その隣では大きく割ったピーマンの皮目がゆっくりと縮んでいく。昨日は土鍋から立つ穏やかな湯気を眺めたが、本日は焼き台の熱が献立の中心にある。

運ばれてきた主皿は、淡い焼き色をまとった豚ロースと、深い緑を残した焼きピーマン。塩麹だれは白く厚く覆うのではなく、肉の表面に薄い艶を添えている。焦げ目も肉の断面も隠さない、控えめな仕立てだ。

まずは豚ロースをひと切れ。

表面にはきちんと焼き目があり、歯を入れると内側にはやわらかな肉質が残る。塩麹の塩気は角がなく、豚肉の脂と甘みを一段持ち上げる。強いたれで押し切るのではなく、噛むほどに肉そのものの味が広がるよう整えられている。

塩麹には、ほのかに甘い発酵の香りがある。

その香りが焼けた脂へ重なることで、醤油だれとは違う丸みが生まれていた。白飯と合わせれば塩気が少しほどけ、肉の旨みが米へ移る。厚みのある一枚を食べても、味が重たく積み上がらないのがよい。

続いて焼きピーマンへ箸を伸ばす。

薄く焼けた皮が歯先でほどけ、その内側から青い香りと瑞々しさが現れる。強い苦みではない。豚肉の脂を受け止めながら、口の中へ緑の輪郭を戻すような味わいだ。

細切りにして肉へ混ぜるのではなく、肉厚の形を残したからこそ、ピーマン自体の甘みと香りがはっきり分かる。焦げた部分には軽い香ばしさがあり、まだ緑を残した部分には夏野菜らしい張りがある。この火入れの濃淡が、皿に単調さを残さない。

添えられた柑橘を豚肉へ少し搾る。

酸味が前へ出るのではなく、脂の余韻だけを短く切っていく。塩麹の甘みも消さず、次のひと口を軽くする。暑い日の肉料理には、このわずかな切れ味がありがたい。

小鉢の冷やしトマトは、白だしを含んだ穏やかな酸味で、焼き台の熱をいったん鎮める。若布と豆腐の澄まし汁は、肉と塩麹の味を静かに受け止め、御膳全体を和食の位置へ戻していた。

昨日の蛸ご飯は、米の中へ旨みが広がる料理だった。

本日の豚ロースは、焼き目、肉汁、塩麹、ピーマンと、一口ごとに味の輪郭が切り替わる。主食が中心の穏やかな一膳から、焼き音のある肉御膳へ。日をまたいだ献立の変化も心地よい。

食後に残るのは、濃いたれの甘さではない。

豚肉のやわらかな脂、塩麹の丸い塩気、そして焼きピーマンの青い香り。力強さはありながら、最後は柑橘が軽く締める。盛夏へ向かう昼に、白飯をしっかり食べさせてくれる一皿であった。

【次回予告】

次回は「帆立と湯葉の青海苔蒸し 澄ましあん御膳」。

豚ロースの焼き目と鉄板の熱から一転し、次は帆立と折り重なる湯葉の白い蒸し物へ。湯気の中で青海苔の香りがほどけ、透明な澄ましあんがやわらかな食感をひとつにつなぐ。

田嶋達郎

呪文

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