「ねえ、見てよ! 完璧な仕上がりだと思わない?」

ウミは頭に乗せた白い花冠を指先で整えながら、隣を歩く親友のチカを振り返った。背後の海はオレンジジュースをこぼしたような色に染まり、逆光を浴びたウミの髪の端が、キラキラと金色の糸のように透けている。

「ええ、確かに似合ってるわよ。但しウミ、それを作るのに夢中で、私たちが乗るはずだった最終バス、もう行っちゃったわよ」

チカが呆れたように腕時計を叩くと、ウミは「あはは!」と豪快に笑い飛ばした。

「いいじゃない、こんなに綺麗な景色なんだし。歩いて帰れば健康にもいいし、何より、この完璧なヒロイン(私)と花冠には、この夕暮れが一番お似合いのステージでしょ?」

「ポジティブすぎるわ……。ところで、その花、どこから持ってきたの?」

「あ、そこの黄金色の穂がゆらゆら揺れてる草むらに咲いてたやつ。ちょっと拝借しただけ!」

「それ、さっきおじいさんが手入れしてた花壇のじゃないでしょうね?」

ウミは一瞬だけ泳いだ目をすぐさま海へと向け、潮風に髪をなびかせた。

「風が気持ちいいなあ! ほら、そんな般若みたいな顔しないで。今この瞬間、私が世界で一番……えーっと、“エモい”ヒロインに見えない?」

「自分で言っちゃうあたりが台無しなのよね。まあ、今日の夕飯が豪華なら許してあげる」

「任せて! 帰りにコンビニで一番高い、箱に入ったアイス買っちゃうから! もちろんチカの奢りで!」

二人の笑い声は、波音に混じって黄金色の空へと溶けていった。

呪文

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