「どうかな、これ」

クローゼットの奥から発掘された、真っ赤なフリル付きの服。それを身に纏った遥は、試着室の鏡の前でくるりと回った。ダボッとしたグレーのパーカーから、鮮やかな赤がチラリと覗く。

「……ねえ、聞いてる?」

返事がない。ベッドで寝転がっていた飼い猫のハチが、尻尾をパタパタさせてこちらを凝視しているだけだ。遥は頬を膨らませた。

「せっかくの休みなのに。これ、十年前の服だよ? まだ着られるなんてすごくない?」

ハチは「ニャー」と小さく鳴くと、またあくびをした。遥はパーカーの裾を引っ張り、再び鏡を覗き込む。少し派手かもしれないけれど、なんだかワクワクする。

「よし、決めた。今日はこの格好で買い物に行く! ハチもついてきてよね」

遥が勢いよくドアを開けると、ハチは慌てて飛び起きて足元にまとわりついた。誰もいない部屋に、遥の弾むような足音が響く。何気ない休日が、少しだけ特別な色に染まり始めた。

呪文

入力なし

夜空さんの他の作品

夜空さんの他の作品


新着AIイラスト

すべてを見る