紫陽花が咲き乱れる雨の庭を歩いていると、背後からひやりとした気配が漂ってきた。

「うらめしや……。ふふふ、今日こそは本気で驚かせるぞ」

振り返ると、そこにはぼんやりと透き通った幽霊が浮いていた。ミナは透明な傘を少し持ち上げ、淡々と言い放つ。

「えっと、驚けばいいの?」

「そうだよ! 普通は叫ぶとか、逃げ出すとかするでしょ。君、反応が薄すぎるよ!」

幽霊は空中でふよふよとジタバタした。

「だって、雨の中でホラーごっこ? 風邪ひくよ」

「私はもう死んでるから風邪はひかないんだけどね。それより、私の怖さを認めてよ!」

ミナは溜息をつき、紫陽花の花びらに付いた雫を弾いた。

「怖い怖い。本当に怖いから、今すぐ消えてくれないと雨で服が台無しになっちゃうでしょ」

「うぐっ……扱いがひどい。これじゃ、ただの濡れた幽霊じゃないか」

ミナは幽霊を無視して歩き出す。その後ろを、しょんぼりとした幽霊が傘の端を掴んでついていく。

「ねえ、無視しないでよ。もう少しだけ、不気味な演出に付き合ってくれてもいいじゃない」

「傘をさしてくれるなら考えるわ」

「……わかった。それなら」

雨音に混ざって、奇妙な幽霊との会話がどこまでも続いていった。

呪文

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