本日のランチ
蓋を開けた瞬間、まず鼻をくすぐるのが焼き穴子の香ばしさ。そこへ新ごぼうの土を思わせる穏やかな香りが重なり、炊きたての湯気と一緒にふわりと立ち上がる。8/17は、この「香りが米へ移る瞬間」を楽しむ御膳だ。
箸を入れると、米はだしを含みながらも重たくない。焼き穴子をひと口噛めば、表面の香ばしさの奥から柔らかな身の旨みがほどけ、ささがきの新ごぼうが細かな歯ざわりを添える。穴子だけが前へ出るのではなく、米、ごぼう、焼き香が順番に顔を見せるのがいい。
以前の穴子ちらし寿司とはまるで違う。今回は酢飯や錦糸卵で華やかに仕立てず、焼いた穴子と新ごぼうを温かなご飯へ受け止めてもらう。茶褐色と生成りを基調にした見た目も実に落ち着いていて、夏の盛りから少しずつ季節が動き始める八月後半によく似合う。
前日の冷たい牛肉と無花果から一転して、今日は湯気までがご馳走。派手さではなく、蓋を開けたときの香りと、噛むほどに現れる新ごぼうの風味で食べさせる。そんな一膳だった。
次回予告――8月18日は「鱧と蓮芋の梅肉冷やし鉢御膳」。
温かな炊き込みご飯から再び涼の世界へ。白い鱧、しゃきっとした蓮芋、そこへ梅肉の赤と酸味を添えた、残暑にうれしい冷たい一鉢を訪ねます。
田嶋達郎
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