色々投稿したいお題が多いときに限って仕事が忙しい……💦


1914年9月1日午後1時、リョコウバトのマーサが死亡しました。
この時をもって、全盛期には50億羽とも言われる大個体数を誇っていたリョコウバトは、それから僅か100年で絶滅生物という名の墓標に名を刻むことになりました。


リョコウバトはその名の通り長距離を移動する習性があり、夏はニューヨークから五大湖周辺にかけて繁殖し、冬は主にメキシコ湾岸で越冬していました。
その移動速度は時速約96km、その群れが移動すると空が数日のあいだ真っ黒に覆われたと伝わります。


リョコウバトはアメリカ先住民にとっては重要な食糧源でしたが、それは自給自足の範囲に留まります。
しかし17世紀以降に入植してきた白人にとって、その無尽蔵とも思える巨大な群れは『収入源』として映りました。
リョコウバト最大の不幸は、その肉が大変な美味としてグルメの対象になったことです。
加えて圧倒的な個体数がもたらす農作物への食害と糞害は尋常なモノではなく、害鳥として駆除の対象になる&食材として狩りの対象になるという両方の面から無制限な乱獲が続けられました。
結果として、50億羽いたはずのリョコウバトは僅か数十年で殆どの個体群が消滅、20世紀を待たずして野生個体は地球上から姿を消してしまいました。


実はリョコウバトは繁殖力が大変低い生物で、その貧弱な繁殖力を圧倒的な個体数でカバーする生存戦略をとっていました。
それが急激な乱獲によって維持に必要な個体数を割り込み、遂には雛や卵まで珍味として狙われるようになったことで更に減少が加速。
あまりに急激な減少だったため人々は慌てて保護活動に乗り出しましたが、すでに手遅れでした。
飼育下で残った個体はあまりに数が少なすぎて繁殖させる試みも成功せず、1910年8月の時点でオハイオ州のシンシナティ動物園で飼育されていた雌のマーサただ1羽のみとなり、この時点でリョコウバトの絶滅は確定しました。
マーサは野生で保護された個体群から生まれた1羽で、生まれたときから一度も外界の空を知ることなく檻の中で一生を過ごした『最後のリョコウバト』でした。


マーサの死は新聞で大々的に報道され、アメリカ合衆国の人々はその死を悼みました。
それは同時に「気付いたときには最後の1羽」では遅い、という強烈な意識を人々に植え付け、現代の自然保護思想へのきっかけの一つになったとされています。
マーサの遺骸は剥製とされてスミソニアン博物館に収蔵されており、『絶滅の脅威』を象徴する存在として今も人々に野生生物保全の大切さを訴えています。

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