「見てよ、この圧倒的な白! 私の悩みなんて、この雪玉一つ分にも満たない気がしてきたわ!」

雪原の真ん中で、セリカは両手を広げて叫んだ。防寒バッチリの白いコートのボタンが、朝日を浴びて誇らしげに光っている。

「……で、その『雪玉一つ分』の悩みって結局何なの?」

少し後ろでカメラを構えていた親友のレイナが、防寒具越しに呆れた声を出す。

「あのね、冷蔵庫の奥で眠ってた限定のイチゴ大福、賞味期限が三週間も過ぎてたのよ! 蓋を開けたら、なんか白くてふわふわした神秘的な何かに包まれてて……昨晩は一睡もできなくて……」

「……捨てなさいよ。それは神秘じゃなくてカビよ。三週間はもはやバイオテロだから」

レイナの冷静なツッコミも、今のセリカには届かない。彼女は眩しい太陽を仰ぎ、眼前の壮大な連峰に視線を投げた。

「でも、この雄大な山々を見て! 地球の数億年の歴史に比べたら、大福の二十一日間なんて瞬きみたいなものでしょ。むしろこの『ふわふわ』は、大自然が私にくれた新しい冬の衣だと言っても過言ではないわ!」

「大過言よ。ただの劇薬だから。あと、あんたさっきから熱弁しすぎて鼻水出てるわよ」

「えっ!? ……あ、本当だ。でもいいの。この鼻水さえも、大自然の循環系の一部として白銀の世界へ還っていくのよ……」

「汚いから早く拭いて。さあ、次は笑顔で撮るわよ。はい、チーズ!」

セリカは最高の笑顔でポーズを決めた。冷たい風も、親友の冷ややかな視線も、今の彼女にとってはちっぽけなスパイスに過ぎなかった。

呪文

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