「ちょっと、手…離さないで」

放課後の階段。
人の気配が消えた踊り場。

並んでるだけなのに、
距離がやけに近い。

「ほら、落ちるでしょ」

軽く引かれて、
指先が触れる。

その一瞬で、
心臓が跳ねた。

「……今の、わざと?」

からかう声が、すぐ横。
逃げ場はない。

もう片方の手も、
いつの間にか掴まれていた。

視線を上げれば、
すぐ近くに顔がある。

でも――
どっちを見ても、近すぎる。

指先の温度だけが、
妙にリアルで。

離したくないって、
思ってしまった。

呪文

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