2026年7月29日 / 食彩探訪 / 厚揚げとモロッコいんげんの塩昆布煮御膳

昨日の黒酢炒めが残した力強い酸味から一夜明け、今日は淡い琥珀色の煮汁が静かに湯気を上げている。

大ぶりに切られた厚揚げへ箸を入れる。きつね色の表面にはわずかな弾力があり、その内側には白く細かな豆腐のきめが現れた。

口へ運ぶと、含ませただしが内側からゆっくりと戻ってくる。塩昆布は前へ出すぎず、昆布だしへもう一段深い旨みと穏やかな塩気を加えていた。

黒い昆布の細片が厚揚げの表面へ絡むたび、大豆の甘みがくっきりと浮かび上がる。醤油を濃くした煮物とは違い、素材の白さを残したまま味だけが染みている。

モロッコいんげんは、一般的ないんげんよりも平たく幅広い。やわらかく煮えていながら、噛めば莢らしい張りがわずかに残り、厚揚げの柔らかさへ心地よい変化を添える。

しめじから出た淡い旨みも煮汁へ溶け込み、塩昆布、大豆、きのこが互いを押しのけずに重なっている。

白いご飯と合わせれば、強い香辛料も脂もないのに、箸は不思議と止まらない。派手な味で引っ張るのではなく、染み込んだだしが次のひと口を誘うのだ。

厚揚げのきつね色、モロッコいんげんの鮮やかな緑、煮汁に揺れる細い塩昆布。落ち着いた色合いの中にも、盛夏の青さがきちんと残されている。

暑さの続く頃には、冷たい料理だけでなく、こうした穏やかな温かさもありがたい。胃を急かさず、静かな旨みで満足させてくれる一膳だった。

次回予告:次回は「太刀魚と青唐辛子の冷やし焼き浸し御膳」。温かな塩昆布煮から一転、銀白の太刀魚を冷たい浸し地へ置き、青唐辛子の細い辛みで盛夏の輪郭を描く。

田嶋達郎

呪文

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