9/6 / 食彩探訪 / 牛肉と里芋の薄口しぐれ煮御膳

湯気の向こうから、まず生姜の香りが立つ。牛肉をひと口運べば、やわらかな身から旨みが煮汁へ溶け出し、そのだしをもう一度まとって舌へ戻ってくる。

里芋は箸がすっと入る柔らかさ。噛むというより、ねっとりとほどけていく食感で、淡い煮汁を芯まで含んでいる。牛肉の脂を受け止めながら、里芋そのものの穏やかな甘さもきちんと残っている。

しぐれ煮と聞いて思い浮かべる濃い醤油味とは違い、今回は薄口仕立て。牛肉にも里芋にも濃い色を付けず、昆布だしの味と素材の持ち味を前へ出しているのが面白い。

昨日はかますを焼き、柚子と銀杏で秋の香りを重ねた一膳。今日は鍋の中でゆっくり味を含ませ、生姜の香りと温かな煮汁で秋を描く。季節の進み方にも、いろいろな表情がある。

次回予告:9/7 / 鮭と秋茄子の冷やし焼き浸し すだち御膳

田嶋達郎

呪文

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