コンビニの悪魔娘のお姉さん
ただ、それだけのお使いだった。
けれど、レジに立っていたのは、黒い角と翼を持つ、見たこともないほど綺麗なお姉さん。
妖艶な笑みを向けられた少年は、すぐにレジへ行く勇気が出ず、意味もなく店内をぐるぐると歩き回った。
パン、お菓子、ジュース、カップ麺――。
気を落ち着かせるつもりで商品を手に取っているうちに、買い物かごはすっかり山盛りになっていた。
ようやく覚悟を決め、少年はかごをレジに置く。
「お、お願いします……」
リリスは楽しそうに微笑みながら、商品を一つずつ読み取っていく。
そして最後の商品を通したところで、ふと少年の瞳をのぞき込んだ。
彼女には、人の心を読む力がある。
少年の頭の奥には、家を出る前に聞いた母親の声が残っていた。
――牛乳、忘れないでね。
「ふふ……大切なものが入っていないわよ」
「えっ?」
「牛乳」
少年は山盛りのかごを見下ろし、その場で固まった。
どうやら彼は、買う予定のなかった物を山ほど買い、たった一つのお使いだけを忘れてしまったらしい。
呪文
入力なし