2026年7月25日 / 食彩探訪 / 鱧と蓴菜の冷やし玉子豆腐御膳

ガラスの鉢に映るのは、鱧の白、玉子豆腐の淡い黄色、そして澄んだ夏だしです。

昨日の焦がし醤油焼きが、鶏皮の香ばしさと白茄子の熱を味わう料理だったなら、今日は冷たさとなめらかさを静かに重ねた一膳です。

中央に据えられた玉子豆腐へ箸を入れると、角を保っていた淡黄色の身が、舌の上で抵抗なくほどけていきます。

卵のまろやかさは強く甘くなく、昆布だしの旨みを含みながら、冷たい汁の中へゆっくりと溶け込んでいきました。

その上に添えられた鱧は、骨切りによって細かな花を咲かせたような姿です。

湯引きされた白身は、口へ運ぶとほろりとほどけ、淡白な中にも、夏の鱧らしい細い旨みを残します。

玉子豆腐のなめらかさと鱧の軽い弾力。どちらも柔らかな食材ですが、舌へ返す感触はきちんと異なります。

蓴菜は、小さな若芽を包む透明なぬめりとともに、玉子豆腐の表面をつるりと滑ります。

噛んだときに残るかすかな歯ざわりと、喉へ抜ける涼やかな感触が、この鉢に夏らしい動きを与えていました。

だしは薄口で澄み、鱧や卵の味を覆いません。酢橘を軽く搾れば、青い香りと酸味が加わり、わさびの細い刺激が後味を静かに締めます。

小鉢の青菜のおひたしは、素直な出汁の味で口を整え、白いご飯が冷製の主鉢を穏やかに受け止めます。

焦げ目も濃いたれもない。それでも、鱧、玉子豆腐、蓴菜、それぞれの温度と口当たりが重なることで、十分な印象を残します。

盛夏の暑さを力で押し返すのではなく、冷たいだしと静かな舌触りで受け流す。淡い色の中に確かな仕事が見える、端正な涼味御膳でした。

次回予告:次回は「合鴨と焼き葱の実山椒煮御膳」。冷たい玉子豆腐と蓴菜の静けさから一転、合鴨の脂、焼き葱の甘み、温かな煮汁の奥から立つ実山椒の香りを訪ねます。

田嶋達郎

呪文

入力なし

yasai_pigmanさんの他の作品

yasai_pigmanさんの他の作品


新着AIフォト

すべてを見る