6/1 / 食彩探訪 / 鱧と梅肉の冷やし出汁茶漬け御膳

六月に入った途端、昼の空気に少し湿り気が混じりはじめた。
店の引き戸を開けると、外の重たい空気が一枚はがれ、木のカウンターと白い器の涼しさが先に目へ届く。

本日の御膳は、鱧と梅肉の冷やし出汁茶漬け。
白いご飯の上に湯引きした鱧がふわりと重なり、中央には梅肉の赤。そこへ大葉、茗荷、胡瓜、刻み海苔、青ねぎが、色と香りの輪郭を添えている。

まず目を引くのは、鱧の白さである。
箸を入れると、細かく包丁の入った身がほぐれ、淡い旨みが冷えた出汁の中でほどけていく。熱い茶漬けの勢いではなく、喉を静かに通る涼やかさがある。

梅肉は、ただ酸っぱいだけではない。
鱧のやわらかな甘みを引き締め、後味に小さな余韻を残す。茗荷は香りを立て、大葉は青く支え、胡瓜は歯ざわりで涼しさを足してくる。

小鉢の胡瓜と茗荷の酢の物は、主碗と同じ方向を向きながら、酸味の質を少し変えてくれる。
冷やし豆腐にのせた大葉は、箸休めというより、御膳全体の温度を整える役どころだ。新生姜の甘酢漬けまで含めて、白、青、淡い赤がきれいに並ぶ。

湿度を帯びた昼に、こういう一膳が出てくると嬉しい。
強く押してくる料理ではないが、器の冷たさ、出汁の透明感、薬味の細い香りが、食べ進めるほどに輪郭を持ってくる。

食後、口の中には梅の酸味と出汁の余韻が静かに残った。
六月の始まりにふさわしい、涼しさで気分を切り替える御膳だった。

次回は「牛肉と新ごぼうの実山椒しぐれ煮御膳」。
冷やし出汁の白い魚介から一転して、香り高い肉の煮物へ。新ごぼうの土の香りと実山椒の余韻を楽しみたい。

田嶋達郎

呪文

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