ふかふかの布団の中で目を覚ました珠生は、頭頂部に何か違和感を覚えた。手を伸ばして触ってみると、ぴょこんと動く柔らかい耳がある。さらに背後にも、もふもふとした立派な白い尻尾が生えていた。

「えっ、嘘……私、どうなっちゃったの?」

ここは信太の森の近く、かつて伝説の白狐「葛の葉」が暮らしたとされるいわれのある土地だった。昨夜スマートフォンでそのいわれを調べていた記憶はあるが、まさか本当に変身してしまうとは夢にも思わない。

困惑する珠生の頭上で、新しい耳がぴくぴく勝手に周囲の音を拾い上げる。小鳥のさえずりがやけにクリアに聞こえ、おまけに尻尾は勝手にパタパタと揺れて機嫌の良さをアピールしていた。

「体が勝手に動いちゃうよ……。これじゃあ外に出られないじゃない!」

鏡を覗き込むと、そこには恥ずかしそうに赤面する可愛い狐耳の少女が映っている。すっかり狐の血に目覚めてしまったらしい自身の姿に、珠生はため息をつきつつも、どこか誇らしげにふさふさの尻尾をギュッと抱きしめた。

「……このもふもふを隠して学校に行くべき? それともこのまま歴史のロマンに身を任せちゃう?」

この姿のまま今日の予定をどう乗り切るべきか、珠生は頭を抱えながら深い悩みに沈んでいった。

呪文

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