桜吹雪の下、ふわりと髪を揺らした彼女は少しだけ頬を染めていた。

「ねえ、あかり。今日もまた緊張してるの?」

友人のひよりがからかうように肩を叩く。あかりは慌てて首を振った。

「ううん、違うの! ただ、この風がこそばゆくて……」

そう言いつつも、彼女の手はぎこちなく震えている。最近、あかりは異性を前にすると、つい突拍子もないことを口走ってしまう癖があるのだ。昨日だって、道を聞かれただけで「私はポテトサラダが好きです」と堂々と宣言してしまい、相手を困惑させたばかりだ。

「ほら、また誰か歩いてきたよ」

ひよりの合図に、あかりは背筋をピンと伸ばす。近づいてきたのは、同じ学年の男子生徒だ。彼はあかりの姿を見つけると、少し照れくさそうに歩調を緩めた。

「あの、これ……」

彼は小さな箱を差し出そうとしていた。告白の予感に、あかりの心臓が跳ね上がる。ここで変なことを言ってはいけない。深呼吸をして、あかりは口を開いた。

「わ、私は……っ! 猫になりたいです!」

桜の下に、奇妙な宣言が響き渡った。男子は一瞬ポカンとしたが、次の瞬間、クスクスと笑い出した。

「面白い人だね。じゃあ、今度猫カフェに行こうか」

思わぬ展開に、あかりは目を丸くする。緊張はどこかへ吹き飛び、桜の花びらが二人の間を優しく舞った。

呪文

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