第4章 王都祭りと恋占い 其の3

使用したAI ChatGPT
二人は顔を見合わせた。

胸の奥が、少しだけ温かくなる。

それは昨日、回復魔法を使った時の光に似ていた。

夜。

中央広場には、無数の小さな灯りが集まっていた。

人々が手に持つ紙灯籠。
屋台のランプ。
王城の前に並べられた魔導灯。

春告げ祭の最後に行われる灯火式が始まろうとしていた。

広場の中央に、王国の神官が立つ。

「この一年、冒険者たちの旅路に光あれ。王都に暮らすすべての者に、穏やかな春あれ」

合図とともに、人々は灯籠を空へ放った。

魔法の灯籠は、ゆっくりと夜空へ昇っていく。

ひとつ。
またひとつ。

やがて王都の空は、星と灯りで満たされた。

セレスティアは目を輝かせる。

「きれい……!」

レオンも空を見上げる。

「ああ」

二人の近くにも、小さな灯籠が二つ置かれていた。

セレスティアがひとつを手に取る。

「願い事、書くんだって」

「何を書くんだ?」

「秘密」

「えー」

「秘密の方が叶いそうじゃん」

「じゃあ俺も秘密」

「レオンの願い、だいたいわかる」

「何だと思う?」

「肉をいっぱい食べたい」

「違う!」

「違うの?」

「……ちょっとはあるけど、違う」

「あるんだ」

二人は笑いながら、それぞれ灯籠に小さな願いを書いた。

セレスティアは少し迷ってから、こう書いた。

みんなが笑顔でいられますように。
それから、レオンが無茶しすぎませんように。

隣でレオンも、ぎこちなく文字を書く。

もっと強くなれますように。
セレスをちゃんと守れますように。
あと、飯がうまい旅になりますように。

書き終えたあと、二人は同時に灯籠を空へ放った。

二つの灯りはふわりと浮かび、寄り添うように夜空へ昇っていく。

セレスティアはそれを見上げながら、ぽつりと言った。

「同じ道って、あんな感じかな」

レオンも灯りを見上げる。

「隣を飛んでるってことか?」

「うん」

「じゃあ、片方が変な方向に飛んだら?」

「もう片方が引っ張る」

「セレス、絶対引っ張る側だろ」

「レオンがすぐ変な方向に行くから」

「ひどいな」

「でも、ちゃんと戻ってくるでしょ?」

レオンは少し考えて、笑った。

「まあ、セレスが呼んだら戻る」

何気ない言葉だった。

でもセレスティアの胸は、きゅっと小さく鳴った。

「……そっか」

「なんだよ」

「なんでもない」

「またそれか」

「本当になんでもない」

セレスティアは空を見上げたまま、少しだけ笑った。

祭りが終わりに近づいた頃。

ギルドへ戻る道で、二人はゆっくり歩いていた。

屋台の灯りは少しずつ消え、人通りも減っている。
王都の石畳には、祭りの余韻だけが残っていた。

レオンは大きく伸びをする。

「いやー、食ったな」

「最後の焼き菓子、三つも食べてたよね」

「四つ」

「増えてる」

「セレスも薬草飴買い足してただろ」

「必要だから」

「菓子だろ」

「薬草菓子」

「まだ言うか」

二人は笑いながらギルドの前まで来た。

その時、扉が内側から開いた。

出てきたのはミラだった。

昼とは違い、表情が少し険しい。

「二人とも」

セレスティアはすぐに気づく。

「ミラ? どうしたの?」

ミラは一枚の封書を差し出した。

王宮の紋章が押された封書だった。

「記録院から返答が来た」

レオンの表情が変わる。

「早いな」

「祭りどころじゃない内容だったみたい」

ミラは封書を開き、中の紙を見せた。

そこには、古い伝承の写しと、王宮魔導記録院の印が押されている。

ミラは低い声で言った。

「風鳴りの祠で見つけた壁画。あれは、古の大戦の記録と一致する」

セレスティアは息をのむ。

レオンが尋ねる。

「つまり?」

「セレスティアの杖と、レオンの剣。二つとも、ただの武器じゃない可能性が高い」

ミラは二人を見つめる。

「それと、もうひとつ。黒い結晶と同じ魔力反応が、王都の地下水路でも確認された」

「王都の中で?」

セレスティアの声が少し震えた。

レオンはすぐに剣の柄に手を置く。

「魔物が出たのか?」

「まだ目撃情報は少ない。でも、下水道近くで小型の影みたいな魔物を見たって報告がある」

祭りの灯りが消えていく王都。

その足元で、黒い瘴気が広がっている。

さっきまでの楽しい空気が、すっと冷える。

けれど、レオンはすぐに笑った。

いつもの、少し強がりで、でも不思議と安心する笑顔。

「じゃあ、次の依頼は決まりだな」

セレスティアも深呼吸して、うなずく。

「うん。王都の中なら、放っておけない」

ミラは二人を見て、少しだけ眉を下げた。

「今日は休みだったのにね」

レオンは肩をすくめる。

「十分休んだ」

セレスティアも笑う。

「お祭り、楽しかったし」

「ならよかった」

ミラは封書をしまった。

「明日の朝、正式に依頼を出す。今日はもう休みな」

「わかった」

「ちゃんと寝るんだよ。特にレオン」

「なんで俺だけ?」

「夜中に剣の練習しそうだから」

「しないって」

セレスティアが横から言う。

「見張っとく」

「いや、そこまでしなくていい!」

「治療した人には責任があるから」

「まだそれ続いてるのかよ」

三人の間に、小さな笑いが生まれた。

けれど、その奥には確かに新しい不安があった。

古代の壁画。
聖女の杖。
封印剣。
黒い結晶。

そして、王都の地下に広がる瘴気。

レオンとセレスティアの冒険は、森の奥だけでは終わらない。

今度は、二人が暮らす王都そのものに迫っていた。

ギルドの前で、レオンは夜空を見上げる。

さっき放った二つの灯籠は、もう星の中に紛れて見えなかった。

それでも、あの灯りの行方を覚えている。

隣にいた光。
同じ道を進む光。

セレスティアが言った。

「レオン」

「ん?」

「明日も、よろしくね」

レオンは笑う。

「こっちこそ、相棒」

セレスティアも笑った。

「うん、相棒」

春告げ祭の夜は、静かに終わる。

けれど、二人の物語はまたひとつ、新しい扉の前に立っていた。

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