第5章 王都地下水路と二人の看板娘 其の2
使用したAI
Stable Diffusion XL
王都東区は、中央広場より少し庶民的で、活気のある場所だった。
通りにはパン屋、道具屋、古着屋、鍛冶場、小さな宿屋が並び、朝から人の声が飛び交っている。
陽だまり亭は、その通りの角にあった。
木造二階建てのあたたかい雰囲気の酒場で、入口には丸い看板が吊るされている。
看板には、笑った太陽と泡の立ったジョッキが描かれていた。
扉を開けた瞬間、香ばしい匂いが二人を包んだ。
肉の煮込み。
焼きたてのパン。
揚げ芋。
甘い蜂蜜菓子。
レオンの顔がわかりやすく明るくなる。
「ここ、いい店だな」
「まだ何も食べてないでしょ」
「匂いでわかる」
「本当に食べ物のことになると鋭いね」
店内では、朝食を取る冒険者や商人たちが数人、木のテーブルを囲んでいた。
その間を、犬耳とふわふわのしっぽを揺らしながら、一人の少女が元気よく駆け回っている。
茶色の髪。
明るい瞳。
白いエプロンのついた黒い給仕服。
両手には皿とジョッキ。
「はいはーい! 肉煮込み二つと、麦茶一つ! 蜂蜜パンは焼きたてだから、ちょっと待っててね!」
彼女は皿を一枚もこぼさず、客の間を軽やかにすり抜けた。
セレスティアが目を丸くする。
「すごい。あんなに持ってるのに全然こぼさない」
レオンもうなずいた。
「あの身のこなし、戦闘でも使えそうだな」
「見るところそこ?」
その少女が、二人に気づいた。
ぱっと笑顔になる。
「いらっしゃーい! 二名様? 冒険者さん? 空いてる席あるよ!」
セレスティアが一歩前に出る。
「私たち、冒険者ギルドから来たんだけど」
少女の犬耳がぴんと立った。
「あっ! 地下水路の件!」
「うん。話を聞きに来たの」
「じゃあこっちこっち!」
少女は二人を奥の席へ案内した。
「私はリコッタ! 陽だまり亭の看板娘! 料理も運ぶし、注文も取るし、酔っぱらいも運ぶよ!」
レオンが笑った。
「酔っぱらいも?」
「床で寝られると邪魔だからね!」
「頼もしいな」
「でしょ!」
リコッタは胸を張った。
その時、店の奥から落ち着いた声がした。
「リコッタ、声が大きい」
現れたのは、銀髪の少女だった。
白い狼耳。
長い銀髪。
黒と白を基調にした給仕服。
リコッタより少し背が高く、表情は穏やかだが、青い瞳は周囲をよく見ている。
「この人たちが、ギルドから?」
「うん! レオンくんとセレスティアちゃん!」
「まだ名前言ってないんだけど」
レオンが驚くと、リコッタはにっと笑った。
「ミラさんから聞いてた!」
銀髪の少女は小さく頭を下げた。
「私はルア。地下水路の異変に先に気づいたのは、たぶん私」
セレスティアも笑って返した。
「私はセレスティア。セレスでいいよ」
レオンも軽く手を上げる。
「レオンだ。よろしく」
リコッタはすぐにセレスティアの手を握った。
「よろしくね、セレスちゃん!」
「うん、よろしく」
ルアは二人の前に水の入ったカップを置くと、椅子に座った。
「まず、匂いの話からするね」
レオンも表情を引き締める。
「頼む」
リコッタは水を配りながら、少し顔をしかめた。
「三日前くらいから、裏口の排水口のあたりが変な匂いするようになったんだよ。普通の下水の匂いじゃなくて、なんか……焦げた鍋と、古い薬草と、湿った鉄を混ぜた感じ」
「想像したくないな」
レオンが小声で言う。
セレスティアは真剣に聞いた。
「瘴気に近いかもしれない」
ルアがうなずく。
「人間にはほとんどわからないと思う。でも、私たちにはわかる。特に夜になると濃くなる」
「黒い影を見たのは?」
「昨日の夜」
ルアは窓の外、裏口の方へ視線を向けた。
「リコッタが樽を片づけていた時、排水口のそばに黒い影がいた。小さな獣みたいだったけど、形が不自然だった」
リコッタが大きくうなずく。
「犬みたいで、猫みたいで、でも足が多くて、もやもやしてた!」
「怖くなかったの?」
セレスティアが尋ねると、リコッタは少しだけ耳を伏せた。
「怖かった。でも、お店の裏で変なのがうろうろしてる方がもっと嫌だった」
ルアが静かに続ける。
「私が追おうとしたけど、地下水路の奥から強い気配がした。だから、その場では追わなかった」
「正解だよ」
セレスティアは優しく言った。
「瘴気は体に入ると危ない。無理に追いかけなくてよかった」
リコッタはほっとしたように息を吐いた。
「やっぱり危ないやつだったんだ」
レオンは腕を組んだ。
「その排水口まで案内してくれるか?」
「もちろん!」
リコッタが元気よく返事をする。
ルアも静かにうなずいた。
「案内する。匂いの強い場所もわかる」
そこで、リコッタは腰につけていた小さな杖を軽く叩いた。
「あと、もし変な魔物が出ても、私もちょっとは戦えるよ!」
セレスティアは目を丸くした。
「リコッタ、戦えるの?」
「うん! 火の魔法が使える!」
レオンが意外そうに見る。
「攻撃魔法か?」
「そう! 厨房で火加減を覚えてたら、いつの間にか火の魔法も得意になっちゃった!」
「どういう覚え方だよ」
「料理は火力が命だから!」
リコッタは自信満々に胸を張った。
「小さい火球とか、爆ぜる光弾とか、熱風くらいなら出せるよ。強い魔法はまだ練習中だけど、牽制なら任せて!」
セレスティアは嬉しそうに笑った。
「すごい。頼もしいね」
「でしょ!」
一方、ルアは腰の後ろに差した短剣に手を置いた。
「私は短剣。正面から力で押すのは得意じゃないけど、敵の足を止めたり、注意をそらしたりはできる」
レオンの目が少し鋭くなる。
「撹乱役か」
「そう。レオンが前に出るなら、私は横を崩す」
「いいな。戦いやすそうだ」
ルアは少しだけ目を伏せた。
「でも、地下水路の奥まで行くかは別。私たちは最初、入口まで案内するだけのつもり」
レオンはうなずいた。
「それでいい。危なくなったらすぐ戻ってくれ」
リコッタは少し不満そうに唇を尖らせた。
「えー」
「えーじゃない。危ない場所なんだろ」
セレスティアも言う。
「無理はしないで。情報をくれただけでも助かってるから」
リコッタはしっぽを揺らしながらも、渋々うなずいた。
「わかった。入口まで」
ルアは冷静に言った。
「まずは案内。状況を見て判断する」
「そういうことで」
レオンは席を立った。
通りにはパン屋、道具屋、古着屋、鍛冶場、小さな宿屋が並び、朝から人の声が飛び交っている。
陽だまり亭は、その通りの角にあった。
木造二階建てのあたたかい雰囲気の酒場で、入口には丸い看板が吊るされている。
看板には、笑った太陽と泡の立ったジョッキが描かれていた。
扉を開けた瞬間、香ばしい匂いが二人を包んだ。
肉の煮込み。
焼きたてのパン。
揚げ芋。
甘い蜂蜜菓子。
レオンの顔がわかりやすく明るくなる。
「ここ、いい店だな」
「まだ何も食べてないでしょ」
「匂いでわかる」
「本当に食べ物のことになると鋭いね」
店内では、朝食を取る冒険者や商人たちが数人、木のテーブルを囲んでいた。
その間を、犬耳とふわふわのしっぽを揺らしながら、一人の少女が元気よく駆け回っている。
茶色の髪。
明るい瞳。
白いエプロンのついた黒い給仕服。
両手には皿とジョッキ。
「はいはーい! 肉煮込み二つと、麦茶一つ! 蜂蜜パンは焼きたてだから、ちょっと待っててね!」
彼女は皿を一枚もこぼさず、客の間を軽やかにすり抜けた。
セレスティアが目を丸くする。
「すごい。あんなに持ってるのに全然こぼさない」
レオンもうなずいた。
「あの身のこなし、戦闘でも使えそうだな」
「見るところそこ?」
その少女が、二人に気づいた。
ぱっと笑顔になる。
「いらっしゃーい! 二名様? 冒険者さん? 空いてる席あるよ!」
セレスティアが一歩前に出る。
「私たち、冒険者ギルドから来たんだけど」
少女の犬耳がぴんと立った。
「あっ! 地下水路の件!」
「うん。話を聞きに来たの」
「じゃあこっちこっち!」
少女は二人を奥の席へ案内した。
「私はリコッタ! 陽だまり亭の看板娘! 料理も運ぶし、注文も取るし、酔っぱらいも運ぶよ!」
レオンが笑った。
「酔っぱらいも?」
「床で寝られると邪魔だからね!」
「頼もしいな」
「でしょ!」
リコッタは胸を張った。
その時、店の奥から落ち着いた声がした。
「リコッタ、声が大きい」
現れたのは、銀髪の少女だった。
白い狼耳。
長い銀髪。
黒と白を基調にした給仕服。
リコッタより少し背が高く、表情は穏やかだが、青い瞳は周囲をよく見ている。
「この人たちが、ギルドから?」
「うん! レオンくんとセレスティアちゃん!」
「まだ名前言ってないんだけど」
レオンが驚くと、リコッタはにっと笑った。
「ミラさんから聞いてた!」
銀髪の少女は小さく頭を下げた。
「私はルア。地下水路の異変に先に気づいたのは、たぶん私」
セレスティアも笑って返した。
「私はセレスティア。セレスでいいよ」
レオンも軽く手を上げる。
「レオンだ。よろしく」
リコッタはすぐにセレスティアの手を握った。
「よろしくね、セレスちゃん!」
「うん、よろしく」
ルアは二人の前に水の入ったカップを置くと、椅子に座った。
「まず、匂いの話からするね」
レオンも表情を引き締める。
「頼む」
リコッタは水を配りながら、少し顔をしかめた。
「三日前くらいから、裏口の排水口のあたりが変な匂いするようになったんだよ。普通の下水の匂いじゃなくて、なんか……焦げた鍋と、古い薬草と、湿った鉄を混ぜた感じ」
「想像したくないな」
レオンが小声で言う。
セレスティアは真剣に聞いた。
「瘴気に近いかもしれない」
ルアがうなずく。
「人間にはほとんどわからないと思う。でも、私たちにはわかる。特に夜になると濃くなる」
「黒い影を見たのは?」
「昨日の夜」
ルアは窓の外、裏口の方へ視線を向けた。
「リコッタが樽を片づけていた時、排水口のそばに黒い影がいた。小さな獣みたいだったけど、形が不自然だった」
リコッタが大きくうなずく。
「犬みたいで、猫みたいで、でも足が多くて、もやもやしてた!」
「怖くなかったの?」
セレスティアが尋ねると、リコッタは少しだけ耳を伏せた。
「怖かった。でも、お店の裏で変なのがうろうろしてる方がもっと嫌だった」
ルアが静かに続ける。
「私が追おうとしたけど、地下水路の奥から強い気配がした。だから、その場では追わなかった」
「正解だよ」
セレスティアは優しく言った。
「瘴気は体に入ると危ない。無理に追いかけなくてよかった」
リコッタはほっとしたように息を吐いた。
「やっぱり危ないやつだったんだ」
レオンは腕を組んだ。
「その排水口まで案内してくれるか?」
「もちろん!」
リコッタが元気よく返事をする。
ルアも静かにうなずいた。
「案内する。匂いの強い場所もわかる」
そこで、リコッタは腰につけていた小さな杖を軽く叩いた。
「あと、もし変な魔物が出ても、私もちょっとは戦えるよ!」
セレスティアは目を丸くした。
「リコッタ、戦えるの?」
「うん! 火の魔法が使える!」
レオンが意外そうに見る。
「攻撃魔法か?」
「そう! 厨房で火加減を覚えてたら、いつの間にか火の魔法も得意になっちゃった!」
「どういう覚え方だよ」
「料理は火力が命だから!」
リコッタは自信満々に胸を張った。
「小さい火球とか、爆ぜる光弾とか、熱風くらいなら出せるよ。強い魔法はまだ練習中だけど、牽制なら任せて!」
セレスティアは嬉しそうに笑った。
「すごい。頼もしいね」
「でしょ!」
一方、ルアは腰の後ろに差した短剣に手を置いた。
「私は短剣。正面から力で押すのは得意じゃないけど、敵の足を止めたり、注意をそらしたりはできる」
レオンの目が少し鋭くなる。
「撹乱役か」
「そう。レオンが前に出るなら、私は横を崩す」
「いいな。戦いやすそうだ」
ルアは少しだけ目を伏せた。
「でも、地下水路の奥まで行くかは別。私たちは最初、入口まで案内するだけのつもり」
レオンはうなずいた。
「それでいい。危なくなったらすぐ戻ってくれ」
リコッタは少し不満そうに唇を尖らせた。
「えー」
「えーじゃない。危ない場所なんだろ」
セレスティアも言う。
「無理はしないで。情報をくれただけでも助かってるから」
リコッタはしっぽを揺らしながらも、渋々うなずいた。
「わかった。入口まで」
ルアは冷静に言った。
「まずは案内。状況を見て判断する」
「そういうことで」
レオンは席を立った。
呪文
入力なし