6/4 / 食彩探訪 / 海老とそら豆のかき揚げ天せいろ御膳

六月四日目の昼は、空に薄い雲がかかっていた。
雨の気配はまだ遠いが、街の空気には少し湿りが混じり始めている。こういう日は、温かい香ばしさと冷たい喉ごしを一度に味わえる昼がうれしい。

客席に運ばれてきたのは、海老とそら豆のかき揚げ天せいろ御膳。
せいろに盛られた蕎麦の淡い灰色、その横に大きく置かれたかき揚げ。蕎麦猪口、薬味皿、冷やしトマトの小鉢、胡瓜の浅漬けまで並ぶと、卓上に外食らしい華やぎが生まれる。

まず目を引くのは、かき揚げの表情だ。
衣の間から海老の橙色と、そら豆の明るい緑が顔を出している。丸い唐揚げのように固まらず、細い衣が重なり合い、ところどころに三つ葉の緑も混じる。揚げ物でありながら、見た目は重くない。

箸を入れると、衣が小さく音を立てて割れる。
海老はぷりっと弾み、そら豆は噛むと青い甘みを残す。玉ねぎの甘さが奥で支え、三つ葉の香りが一瞬だけ立ち上がる。揚げたての熱があるのに、そら豆の色のおかげで、皿全体に初夏の軽さがある。

そこへ、冷たい蕎麦を手繰る。
しっかり締められた蕎麦は、うどんとも冷やし中華とも違う、細く落ち着いた喉ごしがある。蕎麦猪口から立つつゆの香りに、刻み海苔と青ねぎを少し足すと、揚げ物の余韻がすっと整っていく。

この御膳の面白さは、温度の対比にある。
かき揚げは熱く、蕎麦は冷たい。衣の香ばしさを味わったあと、蕎麦の冷たさが口を切り替える。その往復が、昼食に小さなリズムを作ってくれる。

大根おろしと生姜もよく働いている。
天つゆに溶かせば、海老の甘みと衣の油をやわらかく受け止め、後味を重くしない。胡瓜の浅漬けは歯ざわりで涼しさを添え、冷やしトマトの出汁びたしは、赤い色とみずみずしさで卓上を明るくしていた。

昨日の鮎と蓼酢が、川辺の涼しさを思わせる一膳だったなら、今日は蕎麦屋の昼に近い高揚感がある。
かき揚げの香ばしさ、そら豆の青い甘み、冷たい蕎麦の喉ごし。どれも単独で強く主張しすぎず、御膳として一つの昼にまとまっている。

食後に残ったのは、揚げ物の重さではなく、蕎麦つゆの香りだった。
その奥に、そら豆の青い甘みが小さく残る。六月の昼に、熱と涼を一度に楽しむ。そんな外食らしい一膳だった。

次回は「豆腐ハンバーグと初夏野菜のみぞれあん御膳」。
海老とそら豆のかき揚げ、冷たい蕎麦の外食感から、豆腐ハンバーグとみぞれあんの軽い満足感へ。揚げ物の翌日にうれしい、やわらかな主菜を楽しみたい。

田嶋達郎

呪文

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