6/2 / 食彩探訪 / 牛肉と新ごぼうの実山椒しぐれ煮御膳

六月二日目の昼は、雨の気配を含んだ空気だった。
昨日の冷たい出汁の余韻がまだ身体のどこかに残っているところへ、今日は厨房から、醤油と生姜の温かい香りが届いてくる。

客席に運ばれてきたのは、牛肉と新ごぼうの実山椒しぐれ煮御膳。
白い器の中央に、甘辛く煮含めた牛肉と新ごぼうが盛られ、上には青ねぎと三つ葉。茶色い煮物でありながら、器の白と薬味の緑があるおかげで、見た目は重く沈まない。

箸を入れると、まず新ごぼうの細い線がほどける。
噛むたびに、土の香りが湯気に混じり、そこへ牛肉の旨みが追いかけてくる。甘辛い味つけは輪郭がはっきりしているが、生姜が後味を締め、実山椒が舌の奥に細く残る。

この実山椒の働きがいい。
最初から強く主張するのではなく、牛肉を飲み込んだあとに、ふっと青い余韻を残していく。濃い味の煮物を、香りで食べ進めさせる一皿だ。

白ご飯を横に置くと、このしぐれ煮の表情はさらに整う。
牛肉の甘辛さ、新ごぼうの香り、実山椒の小さな刺激。それぞれが白い飯の上でほどよく落ち着き、定食としての満足感が立ち上がる。

小鉢の青菜のおひたしは、口の中を一度冷静に戻してくれる。
豆腐と三つ葉の澄まし汁は、醤油の香りのあとにすっと入ってきて、御膳全体を軽くまとめる。胡瓜の浅漬けも、最後に歯ざわりを残してくれる良い脇役だ。

昨日の白い魚介と冷やし出汁から、今日は牛肉と新ごぼうの温かい香りへ。
六月の始まりは、涼しさだけではない。湿度を帯びた昼に、香りで食欲を引き寄せる一膳もまた、よく似合う。

食後、舌に残ったのは実山椒の細い余韻だった。
派手に追いかけてくる辛さではなく、昼の記憶に小さく印をつけるような香り。こういう一皿があると、午後へ向かう足取りが少し軽くなる。

次回は「鮎の塩焼きと蓼酢の初夏御膳」。
牛肉と新ごぼうの甘辛い煮物から、川魚のほろ苦さと蓼酢の青い香りへ。六月らしい涼やかな焼き魚を楽しみたい。

田嶋達郎

呪文

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