……これが、射的? #夏祭りの鬼軍曹
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「ねえねえ、みんなで夏祭り行かない?」
放課後、クラスメイトの提案に教室が大いに盛り上がっていた時のこと。
「みんな何が楽しみー?」「やっぱり屋台のたこ焼き!」「浴衣着て花火見たい!」なんてワイワイ話していたら、誰かが言ったの。
「私は『射的』かな! 銃で的を撃って賞品もらえるやつ!」
その瞬間、隣で静かに聞いていたリタちゃんの目が鋭く光った。
『……何? 銃で戦利品を獲得する競技だと……!? 興味深い。自分も参加を命じていただきたい!』
「えっ、リタちゃん射撃できるの?」なんて笑うみんなをよそに、私は内心ノリノリだった。
「いいよリタちゃん! 私が着付け教えてあげるから、絶対に浴衣で行こうね!」
……だって、絶対にかわいいに決まってるじゃない!
そして、夏祭り当日。
現地で合流したリタちゃんの姿を見た瞬間、私の脳内麻薬がドバドバ噴き出した。
淡い紫の浴衣に、いつもと違うお団子ツインテール。うなじがチラリと見えて、正直鼻血が出そうなほどかわいい……!!
……かわいい、んだけど。
肩に担がれた、明らかに【黒くてゴツくてヤバいライフル】は何????
「リタちゃん、それ……何……?」
『マム、本日の実戦演習(射的)に備え、自前の対物ライフルを持参した。風向・湿度ともに問題ない。全目標を排除する』
「リタちゃん、銃は店で貸してくれるから大丈夫だよ〜(笑)」
クラスメイトがモデルガンか何かだと思ってサラッと流す中、リタちゃんだけが『……貸与品だと……?』とキョトンとしていた。
そして、噂の射的会場(屋台)に到着した時のこと。
『…………これが、射的か?』
コルク弾が飛び出すチープな木製の銃と、棚に並んだお菓子。
ゴツい対物ライフルを担いだまま、あまりの落差と状況の理解不能さに、リタちゃんは汗をかきながら呆然。
『……了解した。この管轄では規定の装備(コルク銃)を使用する』
そう言って彼女は、担いでいたゴツいライフルをフッとどこかへ仕舞った。……え、どこに隠したのそれ!? 浴衣の帯の裏!? 次元が歪んでない!?
気を取り直して、射的に挑戦するリタちゃん。
狙うは最高難度の棚にある豪華なお菓子。
バシッ! と見事な命中精度で弾を当てるのに、店のおっちゃんが仕掛けた「重くて倒れない罠」のせいで目標がビクともしない。
『なっ……!? 命中を確認したにも関わらず、目標が健在だと……!?』
ニヤニヤ笑うおっちゃん。それに完全に火がついたリタちゃん。
『……連続着弾による構造破壊を試みる!』
目にも留まらぬ高速連射! 同じポイントに寸分狂わずコルク弾を叩き込み、衝撃でついに目標が落下!
「う、嘘だろお前ぇぇ!?」と悲鳴をあげるおっちゃんから、無事に景品をゲットしたリタちゃん。ドヤ顔のリタちゃんも素敵!
その後も、初めての金魚すくいではポイを秒で破いてボロボロになり、ふたりで顔を見合わせて大爆発(笑)。
屋台で買った焼きそばやリンゴ飴を、みんなで「おいしいね」ってほおばって……。
そして、祭りのフィナーレ。ドーン! と大きな音と共に、夜空に打ち上げ花火が広がった。
「……綺麗……!」
見上げる私の隣で、リタちゃんがポツリと呟いた。
『……今まで、炎や爆発音といえば、破壊と死の象徴でしかなかった。……だが、こんなにも美しく、人を笑顔にする炎があるのだな』
夜空の大輪に照らされて、ミリタリージャケットを羽織っていない彼女が、見たこともないくらい優しく微笑んでいた。
『マム。日本の「風情」というものが、少し分かった気がする。……本日は、実に楽しかった』
「……っ!!!!」
不意打ちで見せられたその柔らかな笑顔に、私の心臓がドクン! と跳ね上がった。
あかん。無理。抱きつきたい。今すぐこの愛おしい兵士を押し倒したい……っ!!
爆発する胸のときめきを必死に抑えながら、私は夜空を見上げるフリをして、赤くなった顔を隠したのだった。
呪文
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