【雷鳥倶楽部調査報告書】

某考古学研究所収蔵庫に於いて、深夜、数体の埴輪に囲まれ舞を奉ずる女霊を確認せり。

当該霊は調査員に対し、威嚇・加害等の挙動を一切示さず。

その所作は、特定の死者に対する鎮魂、ならびに守護の祭祀なるものと推察す。

調査の結果、当該霊は当地に伝はる「夭折せる豪族の幼き若君に殉じたる巫女」と同一の存在なる可能性高し。

然れども後続調査により、右の若君は実は巫女自身が密かに産みし実子なりし可能性、極めて高きこと判明せり。

巫女は生前、母と名乗ること叶はぬまま我が子と離れ、その夭折の後「黄泉にても若君を守らむ」と自ら望みて共に葬られしものと思はる。

以上より本件怪異は怨恨に因るものに非ず。

亡き子を守らむとする母の祈り、千載を経てなほ絶えざるものと判断す。

右調査結果を依頼主たる考古学研究所長へ報告せしところ、当該霊に対人攻撃性なき旨を確認の上、敢へてその舞を止むるには及ばず、当人の気の済むまで舞ひ続けるに任すべしとの意向を示されたり。
たとひ十年、百年に及ぶともこれを妨ぐるには及ばずとの回答を得たり。

依りて除霊・封印等の措置はこれを行はず。

収蔵物ならびに当該霊への不用意なる干渉を避け、当面は経過観察とす――。


桜木ハル様主催「埴輪の日」投稿作品です🏺
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