再起のメロディ #……音楽が、したいです……
少し前までは、黒髪姫カットの『優等生な吹奏楽部長』だったはずなんだけどね。
今の私は見ての通り。重めのアイラインに、地雷系ファッション。
自嘲気味に笑う唇には、尖った言葉しか似合わない。
……なんで、こうなったんだっけ?
音楽が、ただ純粋に好きだった。
高校の吹奏楽部は私の世界のすべてで、仲間と一緒に吹く時間が最高に幸せだった。
大学に合格した時は、もっと輝かしい未来が待っているって信じて疑わなかったのに。
現実は、そんなに甘くなかった。
大学の管弦楽団はお金がかかる。楽器のメンテナンス、遠征費、レッスン代……。
音楽をするために始めたはずのアルバイトに追われ、気づけばみんな、楽器よりシフトの相談ばかり。
そのバイト先でも人間関係に躓いて、いつの間にか大学にさえ足が向かなくなっていた。
空っぽの心に、この派手な服を詰め込んで。それが、今の私。
そんな私を、恩師のアンナ先生が『練習を見に来ないか』って誘ってくれた。
正直、怖かった。今の私なんて見られたくない。
でも、先生なら……先生なら、この泥沼みたいな毎日を変えてくれるかもって、心のどこかで期待してた。
気がつくと、高校に行く日のことばかり毎日考えていた。
『えっ、ミキ先輩!? その服、めちゃくちゃ可愛い! どこのブランドですか?』
『メイクも完璧じゃないですか! センスが違います!』
後輩たちが、今の私の格好をイジってくる。
……やめてよ。
素の自分を見せられないだけなのに。
「あ……えっと、これは、その……」
後輩の明るい言葉にさえ上手く返せない。
みんなを引っ張っていたあの頃の自分と比較して、情けなくて死にたくなる。
でも。
アンナ先生が黙って差し出してくれた、黄金色のトランペット。
それを手にした瞬間、指先に懐かしい温度が伝わってきた。
合奏が始まれば、一気に意識が引き戻される。
音が重なる。振動が胸に響く。
ああ、だめ……終わらないで。もっと、ずっとこの感覚の中にいたい。
気がついたら、演奏の途中からずっと涙が止まらなかった。
感情がぐちゃぐちゃ。視界が滲んで、せっかくのメイクも台無し。
大好きな音楽に背を向けて、言い訳ばかりしてた私、本当にダサすぎだよ。
その上、こんなみっともない姿で泣きじゃくって……。
でも、それ以上に……。
どんなに辛くても、どんなに寄り道しても、戻れる場所があるんだって。
その場所が、私を待っててくれたんだって気がついたの。
私、やっぱり……やっぱり、音楽が好きなんだ。
ふと顔を上げると、アンナ先生が優しく微笑んでいた。
あの頃と変わらない、すべてを見透かしたような、温かい眼差し。
視界が涙で歪む。それでも、私は声を振り絞った。
「アンナ先生……」
「……音楽が、したいです……!」
呪文
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