休日の昼下がり、シェアハウスの小さなキッチンは香ばしい匂いに包まれていた。

「ボク、別に特別な料理を作ってるわけじゃないんだけど……」

フライパンを握るくわくの背中に、三つの熱視線と一つの無邪気な視線が突き刺さっている。

今日のごはんは、余った冷やごはんをつかった「黄金のたまご炒飯」。具材はネギと卵とチャーシューだけ。しかし、くわくが手際よくフライパンを振るたびに、パラパラのお米とごま油の香ばしい匂いが部屋いっぱいに広がっていく。

「くわくの作るごはんは、いつだって最高のごちそうなの!」
ミミが黒髪のツーサイドアップを揺らし、猫耳をピンと立ててテーブルをトントンと叩く。

「べ、別に楽しみに待ってたわけじゃないんだからね。ただ、お腹が空いてただけ……でも、ちょっと美味しそうじゃない」
ララはツンとそっぽを向きつつも、ブロンドの髪から覗く猫耳をピコピコと動かして碧眼を輝かせている。

「くわくさんのごはん、いつも優しくて大好きな味です……」
リリは恥ずかしそうにパステルピンクの髪に顔を埋めながら、くんくんと匂いを嗅いで頬を緩ませていた。

「ふふーん! 名門ゴールディ家の舌をも唸らせる管理人特製炒飯、今日もいただくよー!」
ドタバタと廊下を走ってきたのは親友のミラだ。金色の瞳をキラキラさせ、きつね耳とシッポをぶんぶんと振っている。

「ちょっとミラ、走ったら危ないって――あ」
くわくの制止も虚しく、ミラが足を滑らせてくわくの背中にダイブ。
「わわっ!?」

ぐらりと体勢を崩すくわく。だが長年の「巻き込まれ体質」で鍛えられた反射神経により、なんとか炒飯の入ったフライパンだけは死守し、大きな皿に見事な小山を描いて着地させた。
「ふぅ……危なかった……」

「わあぁ! すごい! まあるくてピカピカ!」
ミミたちが目を輝かせて拍手を送る。

大皿を囲んで、みんなで「いただきます」の手を合わせる。

レンゲですくって一口食べれば、卵のやさしい甘みとごま油のコクが口いっぱいに広がり、思わず全員の耳が幸福感でふにゃりと垂れ下がった。

「ん~っ! これこれ! これぞ実家の味~!」
「実家っていうか、ここが私たちの家だけどね……でも、すごく美味しい」
「はい……とっても温かいです」

美味しそうに頬張る4人を眺めながら、くわくはレンゲを口に運んだ。
がんばったごちそうじゃなくても、大好きなみんなと「美味しいね」と言い合える。それだけで、今日の昼下がりはとびきりのフルコースだった。

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