「薬草スープ、できました♪」

使用したAI その他
ベルが満面の笑みとともに運んできたのは――
濃い緑色をした、とろりとした薬草スープだった。

刻まれた薬草や葉がたっぷりと浮かび、その中にはいくつものキノコ。
よく見れば、どう考えても普通とは思えない紫色のキノコや、小さな花まで混じっている。

そして立ち上る湯気には、なぜかほんのりと紫色が混じっていた。

「お待たせしました♪ 特製、疲労回復の薬草スープです!」

「…………」

先ほどまで期待に満ちていたノアの表情が、わずかに引きつる。

「……ベルさん、これが薬草スープ?」

「はい! 疲労回復に効く薬草を中心に、滋養のあるものも色々入れてみました。遺跡の探索で皆さんお疲れでしょうから、いつもより少し多めに調合してあります♪」

「……やっぱり調合なんだ」

ノアが小さく呟く。

フィオナも自分の前に置かれた器を覗き込み、恐る恐る紫色のキノコを指差した。

「ねえ、ベル。これ……本当に食べられるキノコよね?」

「もちろんですよ。見た目はちょっと変わっていますけど、滋養強壮にとてもいいんです」

「……では、この紫色の湯気は?」

今度はセラが静かに尋ねる。

「ああ、それですか? 薬草を一緒に煮込むと、たまにそうなるんですよ」

「「「たまにそうなる……?」」」

三人の反応など気にも留めず、ベルは自信満々に微笑んでいる。

少なくとも薬草に関して、ベルの知識が確かなことは三人とも知っている。
ならば、見た目はともかく危険なものではないはずだ。

……たぶん。

意を決して、ノアが最初の一口を口に運ぶ。

「…………」

動きが止まった。

「……ノア?」

「…………」

「どうです? 身体が温まるでしょう?」

「……はい。すごく……薬草の味がします」

嘘は言っていない。

その様子を見ていたフィオナとセラも、覚悟を決めてそれぞれ一口。

「…………っ」

「…………これは……」

再び、食卓に沈黙が訪れた。

「どうですか?」

ベルが期待に満ちた目で三人を見る。

「……うん。すごく身体に良さそうね」

「ええ……薬草の成分を余すところなく味わえる、と言いますか……」

「でしょう? 今回は皆さんかなりお疲れでしたから、薬効を重視してみたんです♪」

「「「…………」」」

どうやら三人の予感は正しかった。

身体には、とても良さそうだった。

そんな中、ベルがふと思い出したように顔を上げる。

「あっ、そうだ。遺跡で見つけた術式について、少し調べたいことがあったんでした」

ベルは席を立つと、書斎へ向かう。

「皆さんはゆっくり食べていてくださいね。食べ終わった器はそのままで大丈夫ですから♪」

「う、うん……」

「ありがとうございます……」

「…………」

やがて書斎の扉が閉まった。

食卓に残された三人。

「…………」

「…………」

「…………」

フィオナは自分の器を見つめると、もう一度だけスプーンを口へ運んだ。

「…………っ」

そして――

スッ……。

無言で器をノアの前へ寄せた。

「……え?」

続いてセラも、もう一口だけ薬草スープを口にする。

「…………」

スッ……。

「ちょっと待って」

ノアの前に、二つの器が並んだ。

「ごめん、ノア。私にはこれ以上は無理」

「ベルさんには申し訳ありませんが……私も、これ以上は……」

「だからって、なんで俺に!?」

「だってノア、さっき『なんだかすごく効きそうですね』って期待してたじゃない?」

「そういう意味じゃないよ!」

「それに……ベルさんが戻ってきた時に残っていたら、悲しませてしまうかもしれません」

セラの言葉に、ノアの反論が止まった。

「…………」

自分の器を見る。

フィオナの器を見る。

セラの器を見る。

そして、ベルが消えていった書斎の扉を見る。

「…………分かったよ」

ノアは静かにスプーンを握り直した。

その日。

ノアは少しだけ強くなった。

たぶん。

呪文

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