アストリアの日常5「焚き火の前で」

使用したAI その他
魔獣討伐の後、第七聖剣隊はようやく森の外れに辿り着いた。
空はすでに真っ暗で、星々が冷たく瞬いている。
隊員たちは傷の手当てを終え、簡易の野営を張り始めた。

アストリアは一人、焚き火の傍に座っていた。

彼女は背筋を伸ばしたまま、両手で紙カップを包み込むように持っていた。
中身は補給係が沸かしたハーブティー。
熱い湯気が、疲れ切った体にゆっくりと染み込んでいく。

「……終わったわね」

ぽつりと呟く声は、誰にも聞こえないほど小さかった。
今日の魔獣――巨狼は、予想以上に手強かった。

一瞬の隙に隊員の一人が吹き飛ばされ、アストリアは咄嗟に盾となって受け止めた。

左腕に鈍い痛みが残っているが、骨は折れていない。
それだけでも、十分に「勝ち」だ。

カップを唇に近づけ、そっと一口。
ほのかな苦みと、かすかな甘みが、戦いの後の乾いた喉を潤す。
普段は「味など感じない」と言い聞かせているのに、今夜は違う。
温かさが、鎧の隙間からじんわりと広がっていく。

ふと、足元で小さな物音。

視線を落とすと、灰色の野ウサギが一匹、恐る恐る近づいてきていた。
戦いの余波で怯えていたのだろう、耳をぴくぴくと動かしながら、彼女のブーツの先をクンクン嗅ぐ。

「……君も、無事だったのね」

アストリアはゆっくりと膝を曲げ、手袋をはめたままの指を差し出す。
ウサギは少し躊躇ったが、すぐに彼女の掌に鼻を寄せた。
冷たい金属の感触に驚いたように一瞬引いたが、温もりが伝わると、安心したように体を預けてくる。

彼女は無言で、そっと背中を撫でた。
戦場では決して見せない、柔らかな仕草。
炎の揺らめきが、金髪を優しく照らし、青い瞳に小さな光を映す。

(守れた……今日は、みんなを。
でも、この子のように、怯えていた命も、たくさんあったはず)

胸の奥で、何かが小さく疼く。
騎士として生まれた以上、戦うことが定め。
それでも、こんな夜に、温かい飲み物と小さな生き物の温もりが、こんなにも欲しくなるなんて。

「……ありがとう」

誰に言うでもなく、ウサギに、炎に、夜空に。
アストリアはもう一口、ハーブティーを飲んだ。
今度は少し長く、味わうように。
遠くから、隊員たちの笑い声が微かに聞こえてくる。
明日の朝には、また王都へ帰る。
報告書を書き、傷を癒し、次の任務に備える。

でも今、この瞬間だけは――

彼女は目を閉じ、焚き火の温もりと、膝の上の小さな命の鼓動を感じた。
疲れ果てた体が、ほんの少しだけ、17歳の少女に戻る。
炎がぱちんと弾け、火の粉が夜空に舞い上がった。

アストリアの口元に、誰にも見えない、静かな微笑みが浮かんだ。

(少しだけ……休んでも、いいわよね)

アストリアの簡単なプロフィールはこちらに載ってます。
https://www.chichi-pui.com/posts/32237fb0-b029-435f-aacf-149091020727/

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