港町、暮れ六つの記憶/スマホ壁紙アーカイブ
暮れ六つの鐘が鳴るころ、
坂の下では一軒ずつ窓に灯が入り、
沖から戻る船の影が黄金の水面をゆっくり横切った。
古い電柱のそばで、
少年は父の船を待っていた。
帰港の時刻はとうに過ぎていたが、
母は何も言わず、
玄関の灯籠だけをいつもより早くともした。
やがて沖の光がひとつ揺れ、
少年は濡れた石段を駆け下りた。
それが父の船だったのかは、
今ではもう覚えていない。
ただあの夕暮れだけが、
町じゅうの灯を抱いたまま、
遠い記憶の海に浮かび続けている。
呪文
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