ドン・ペーリ・ボア博士

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「人類がね、凄まじいのは、【狂気】というものを意図的に創り出せるところですよ。

つまりね、現在あるものに、何か一つ要素を加えてみる。たった一つですよ。ところが、それだけで世界は大きく変わってしまう。

計算だってそうでしょう。一つ数を加えれば、少しずつ数字がズレていき、最後にはまったく別の答えになる。

それと同じですよ。

例えば、正義に「殺し」を一つ加える。――戦争になる。

夫婦に「女」を一つ加える。――修羅場になる。

ね? おかしなことになるでしょう。

発明やひらめきというものも、結局は同じなんです。

人間が持っている【狂気】を、総合的に、少しだけ良い方向へ持っていったもの。それを我々は「発明」と呼んでいるに過ぎない。

だから私は、発明家や科学者が「自分は狂っていない」と言うのを、あまり信用していません。

狂っているんですよ。

ただ、狂気の使い方が上手いだけです。

そして、もしかすると――そのうち人類は、機械に「脳みそ」を一つ足して、神めいたものを創り出すのかもしれない。

あなた方科学者が、この世界に【何か】を一つ足そうとするとき、そのことを、ゆめゆめ忘れてはならんのです。

命に知恵を足された我々「人類」には、何かを生み出す力がある。

しかし同時に、何を生み出してしまったのかを引き受ける責任もある。

それこそが、知恵を与えられた人類の責任だと、私は思っとるんですよ。」



1968年10月――コペンハーゲン大学・物理学研究棟にて、77歳になったドン・ペーリ・ボア博士が、若い物理学者・数学者・工学者を前に講演した際の言葉である。

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