夜明け前、湖は鏡のように静かだった。

水位の低下によって姿を現した巨大な石造門。その向こうには、天へ、そして地の底へと果てしなく続く塔が揺らめいていた。

「……無限迷宮」

調査隊の誰かが呟く。

研究者の測定器は異常な魔力値を示し、ツチビトの技師は古びた遺跡の石が「まるで昨日造られたようだ」と首をひねった。

その時、ケモノビトの斥候だけが湖を見ていた。

「水辺から離れて」

澄んだ水の底で、巨大な黄金の眼が開く。

湖そのものと見紛うほどの魔獣だった。

だが、怪物が見つめていたのは冒険者たちではない。

――石の門だった。

やがて門の奥で、青白い光が脈打つ。

その向こうから、何かがゆっくりと歩いてくる。

人か、魔獣か。それすら分からない。

剣士はしばらくその姿を見つめ、静かに剣を抜いた。

「行こう」

朝日が山を越え、湖面を黄金色に染める。

その日、誰も知らなかった無限迷宮の新たな入口が開いた。

後に人々は、この場所をこう呼ぶことになる。

――《水鏡の門》。

呪文

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