アンバサダー ロイヤル

使用したAI Dalle
(チリンチリーン)

ドアの音が、いつもより少しだけ重く響いた気がした。

たまには、違う場所に来てみようと思った。
香澄たちのバーとは違う空気を吸ってみたくて。

重厚な木のカウンター。
低く落とされた照明。
静かに流れる音楽。

「……たまには、気分を変えてみるのも悪くないな」

思わず、そんな言葉が口をついて出る。

落ち着く。
でも、どこか張り詰めている。

“いい店”だと、すぐにわかる。

「……あら?凪咲さん?」

聞き覚えのある声に、心臓が一拍遅れる。

「え、澪さん?」

視線の先にいたのは、まさかの人物だった。

やばい。
変な声出てないよね、今。

一瞬迷ったけど、この距離で離れた席に座るのも不自然で。
私は少しだけ緊張しながら、隣に腰を下ろした。

「びっくりしました。澪さん、こういうところにも来るんですね」

「視野を狭くしたくないからね。それに――ここは良いバーだと知っているから」

さらりと言う。

やっぱりこの人、見ているものが違う。

何気ない一言に意味を探してしまう自分がいる。
今日ここで会ったことにも、何か意味があるんじゃないか――なんて。

そんなわけないのに。

しばらくは他愛ない話だった。

仕事のこと。
休日の過ごし方。
好きなお酒。

不思議と話しやすい。
いや、正確には――

話させてもらえている、という感覚。

少し話しただけなのに、思考が整理される。
言葉の端々に、ヒントみたいなものが混じっている。

(ほんと、この人どんな視点で世界見てるんだろ)

でも、こういう機会は逃したくない。
ちゃっかりしてる?いいじゃない、それも私だ。

ふと、澪さんが口を開いた。

「そういえば、有紗さんだけど……最近、お仕事ではどう?」

「有紗先輩ですか?」

私は何も考えずに答える。

「やり方、変わりましたよ。あ、やっぱり澪さんが何か言ってくれたんですね!」

――その瞬間。

ほんの一瞬だけ。

澪さんの表情に、影が落ちた気がした。

気のせい?
いや――違う。

「……そう。なら、良かった」

すぐに戻る。
いつもの澪さん。

でも、今のは。

(……ああ、そういうことか)

私は少しだけ考えて、言葉を選んだ。

「きっと、有紗先輩……澪さんに感謝してますよ」

澪さんが、こちらを見る。

驚いたような顔。

「有紗先輩って、“求められたら助ける人”だったんですけど……最近は違うんです」

グラスを軽く持ち上げる。

「自分から動いてる。正直、上手くいかないこともあるみたいですけど」

一口飲む。

「でも、上手くいったときの顔が……本当に嬉しそうで」

少し笑ってしまう。

「あんな顔、今まで見たことなかったです」

沈黙。

澪さんはまだ、少しだけ驚いた顔をしていた。

(……ああ、この人)

こんな顔もするんだ。

なんだか少しだけ、距離が縮まった気がした。

「……どうして、話してくれたの?」

「うーん……」

少し考えて、肩をすくめる。

「澪さん、抱え込みすぎてるように見えたから、ですかね」

言ってから、やばいと思った。

これ、結構失礼では?

でも――

もう止まらなかった。

少しの沈黙。

グラスの中で氷が、静かに音を立てる。

「……ちょっと、個人的な話をしてもいい?」

「もちろん」

軽く笑って返す。

「ヤバいと思ったら、ちゃんと聞こえないフリしますよ」

澪さんが、ふっと笑った。

ほんの少しだけ。

その笑い方は、今まで見たどれよりも柔らかかった。

「私ね」

澪さんはゆっくりと言葉を選ぶ。

「人の選択を尊重するって、決めてるの」

「……はい」

「でも時々、それで良かったのかって思うことがある」

静かな声だった。

でも、その奥にあるものは重い。

「本当は、引き留めるべきだったんじゃないかとか……違う言葉をかけていたら、とか」

私は黙って聞く。

遮らない。

それがたぶん、今の正解だと思ったから。

「選ばせるって、簡単じゃないのよ」

澪さんは小さく息を吐いた。

「責任を手放すことでもあるから」

少しだけ、考える。

この人は、ずっと“送り出す側”にいる。

だから――

「……でも」

私はゆっくり口を開いた。

「選んだ人が、ちゃんと前に進んでるなら」

澪さんがこちらを見る。

「それって、間違いじゃなかったってことじゃないですか?」

少しだけ、笑う。

「少なくとも、有紗先輩はめちゃくちゃ楽しそうですよ」

沈黙。

でも今度は、重くない。

「……そうね」

澪さんが、ほんの少しだけ肩の力を抜いた。

「ありがとう」

その一言は、とても静かだった。

しばらくして。

澪さんがバーテンダーに視線を向ける。

「せっかくだし、もう一杯どう?」

「いいですね。じゃあ……」

少し考える。

「おすすめ、ありますか?」

澪さんは少しだけ考えてから、言った。

「じゃあ、ウイスキーにしましょうか。少し変わったものを」

やがて出てきたのは、琥珀色の一杯。

ロックグラスの中で、氷が静かに輝いている。

「アンバサダー・ロイヤル。少し珍しい銘柄よ」

グラスを手に取る。

「“アンバサダー”って、大使って意味ですよね?」

「ええ。元々は外交や接待を意識したブレンドでね。バランスが良くて、誰にでも受け入れられる味わいを目指している」

一口飲む。

まろやかで、やわらかい甘み。
角がないのに、芯はしっかりしている。

「……すごい。飲みやすいのに、軽くない」

「でしょ?」

澪さんが少しだけ微笑む。

「人と人の間を繋ぐようなお酒なの」

その言葉を聞いた瞬間。

ふと、思った。

(ああ)

この人は――

「……澪さんって」

気付けば、口に出していた。

「アンバサダーみたいですね」

澪さんが少し驚いた顔をする。

「人と人の間にいて、でも自分は前に出すぎなくて」

グラスを見つめる。

「でもちゃんと、全部を繋いでる」

少し照れくさい。

でも、言葉は止まらなかった。

澪さんは、何も言わなかった。

ただ静かにグラスを傾ける。

「……そうかもしれないわね」

小さく、そう言った。

氷が、ゆっくりと溶けていく。

さっきまで感じていた距離は、もうなかった。

完全に同じ場所に立っているわけじゃない。
でも――

(少なくとも、遠くはない)

「また、ご一緒してもいいですか?」

気付けば、自然にそう言っていた。

澪さんは少しだけ目を細める。

「ええ。ぜひ」

グラスを軽く合わせる。

澄んだ音が、静かに響いた。


----------
この前飲んだこちらがあまりに美味しかったので、お話を書いちゃいました♪
ですが、終売しているウイスキーのため、かなり限られた場所でのみ飲めるものとなっております…
意外と流通数はまだ多い、との話も聞くのですがね。

重めのスコッチが飲みたい、とリクエストして出てきたのがこちらでした。
スモーキーさも感じられ飲み応えもありましたが、蜂蜜やドライフルーツも思わせる甘さもバランス良く感じられるものでしたね。
その後に水割りで頂いても、飲み応えはそのまま柔らかさが更に伸びたような印象でした。

あまり歴史をちゃんと追えなかったのですが、高級向けに設計された1本のようですね。
でも親しみやすい、柔らかさもある素晴らしいものと思いました。
終売してしまったのが、惜しいなぁと感じてしまうものですね。

そして澪さんの別の角度から魅力を引き出すため、今回は凪咲さんと組んでみてもらいました。
会社員という立場、どうしても経営者には恐れとか天上人のような印象を持っていた凪咲さん。
そう思っていた澪さんがふと見せた人間らしさ…

というようなストーリーにしてみましたが、いかがでしたでしょうかね♪

呪文

呪文を見るにはログイン・会員登録が必須です。

イラストの呪文(プロンプト)

jacket partially removed, heart in eye, burnt clothes, holding fishing rod, kanji, doujin cover, pentagram, tape gag, adjusting headwear, red socks, friends, cloud print, coke-bottle glasses, oral invitation, competition school swimsuit, barbell piercing, gradient legwear, prisoner, blood on breasts, wind chime, carrying over shoulder, tape measure, flaming weapon

イラストの呪文(ネガティブプロンプト)

入力なし

A.Libraさんの他の作品

A.Libraさんの他の作品


新着AIイラスト

すべてを見る