【月面のタッチダウン】

残り三秒。

背番号17は砕けた月砂を蹴って
エンドゾーンへ身体を投げ出した。

観客席の歓声はヘルメット越しに遠い。

代わりに胸の奥では
幼い日の声だけがはっきり鳴っていた。

いつか地球を飛び出して
誰も見たことのない試合をすると笑った。

あの日の約束が
いま月面の白い土煙の中で続いている。

指先がボールを抱えたまま赤いラインを越える。

その瞬間
青い星がスタジアムの上で静かに光った。

重力の軽い世界なのに
その一歩だけは
少年の頃よりずっと重かった。

勝利より先に彼が思ったのは
夢にもちゃんと着地点があるということだった。

呪文

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