鯨が空へ帰る日/スマホ壁紙アーカイブ
街の灯りがひとつずつ点き始めるころ、
彼女は橋の上で足を止めた。
ビルの谷間を満たしていた夕焼けの奥から、
透き通った鯨がゆっくりと姿を現した。
誰も驚かず、
車も人もいつもの速さで流れていく。
けれど彼女だけは知っていた。
幼い日に見失ったあの鯨が、
長い旅を終えて帰ってきたのだと。
風に髪をほどかれながら、
彼女は胸ポケットの小さな貝殻を握った。
鯨は一度だけ街を振り返り、
星の浮かび始めた青へ静かに昇っていった。
その夜から、
彼女は海の夢を見なくなった。
呪文
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