前回からの続き
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番外編・姉妹の夜
「別々の舞台で」

「夏のファッションショー」内で学生による「理想の夏コーデ」を開催する提案は、運営側から正式に拒否された。

しかし大学は、後日、大学構内で学生たちが自主的にミニファッションショーを開催することを認める。

その知らせを受けた日の夜。
姉妹は自宅のリビングで、パジャマ姿のまま向き合って話す。

1 夜のリビング
夜。
姉は淡いピンク色のパジャマ、ボブ子ちゃんは水色のパジャマ姿。
テーブルには二人分の温かい飲み物が置かれている。
姉がソファに座るボブ子ちゃんへ尋ねる。

 「大学でなら、『理想の夏コーデ』を開いてもいいって言われたんだよね?」 
ボブ子ちゃん
 「うん」
 「アリーナのショーが終わった後になるけど、大学の中庭を使わせてもらえることになった」

姉はほっとしたように笑う。

 「よかった……」

しかし、ボブ子ちゃんの表情は晴れない。
---

2 素直に喜べないボブ子ちゃん

 「うれしくないの?」
ボブ子ちゃん
 「うれしいよ」
 「先輩たちも、もう一度、自分たちでショーを作れるって喜んでる」

少し間を置いてから続ける。
ボブ子ちゃん
 「でも、本当はアリーナの中でやりたかった」

> 「私たちが始めたショーなのに、大きくなった途端に外へ出されたみたいで……」

姉は黙って聞いている。

ボブ子ちゃん
 「大学で開催できるのは、ありがたいことだって分かってる」
 「それでも、運営側に『学生らしい企画は必要ない』って言われたことは、消えないから」

---

3 姉の罪悪感
姉はカップを両手で包みながら、うつむく。

 「私は、そのアリーナの舞台に立つんだよね」

ボブ子ちゃん
 「うん」

 「学生の企画は入れないのに、私たちプロモデルは真ん中に立つ」
 「やっぱり、変だよね」
ボブ子ちゃん
 「お姉ちゃんが決めたことじゃないよ」

 「でも、舞台の上に立てば、外からは同じに見える」

姉は少し苦しそうに笑う。

 「ボブ子たちのショーを押しのけた人に見えるかもしれない」

---

4 出演辞退を口にする姉
姉が迷いながら話す。

 「まだ間に合うなら、私……出演を断った方がいいのかな」

ボブ子ちゃんはすぐに首を振る。
ボブ子ちゃん
 「それはしないで」

 「でも……」
ボブ子ちゃん
 「お姉ちゃんが降りても、学生企画が戻ってくるわけじゃない」
 「別のモデルさんが、その場所に立つだけだよ」
 「それに、お姉ちゃんがずっと欲しかった仕事なんでしょう?」
姉は答えられない。

ボブ子ちゃん
 「私、お姉ちゃんを応援したことまで、間違いだったことにしたくない」

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5 二つの気持ちは両立する
姉はボブ子ちゃんを見る。


 「でも、ボブ子は悔しいんでしょう?」
ボブ子ちゃん
 「悔しいよ」
 「お姉ちゃんに成功してほしい」
 「でも、私たちのショーを軽く扱ってほしくない」
 「どっちか一つだけなら、もっと楽だったと思う」

姉は少し考えてから答える。

 「どっちも本当なら、どっちも捨てなくていいんじゃない?」
ボブ子ちゃん
 「そんなこと、できるのかな」

 「できなくても、やってみるしかないよ」

---

6 姉ができること

姉は少し前のめりになる。

 「大学のショー、私にも何か手伝わせて」

ボブ子ちゃんは驚く。
ボブ子ちゃん
 「お姉ちゃんが出演するの?」

 「それは違うと思う」
 「私がモデルとして出たら、またプロ側が学生のショーに乗っかったみたいになる」
姉は少し笑う。

 「だから、裏方ならどうかな」
 「衣装を運ぶとか、椅子を並べるとか」
 「できることがなければ、普通のお客さんとして見る」

ボブ子ちゃんの表情が少し和らぐ。
ボブ子ちゃん
 「プロモデルなのに、椅子を並べるの?」

 「パジャマ姿よりは、ちゃんと働いて見えると思う」

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7 姉の願い
姉は真剣な表情に戻る。

 「私、ボブ子たちのショーをちゃんと見たい」
 「アリーナのショーは、大勢の人に見てもらうための舞台」
 「でも、『理想の夏コーデ』は、一人一人が何を考えて服を選んだのかを見る舞台なんでしょう?」
ボブ子ちゃん
 「うん」

 「だったら私も、観客として見つけたい」
 「ボブ子が何を着て、何を伝えようとしているのか」

これは、以前ボブ子ちゃんが姉を励ました言葉への返答にもなる。

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8 ボブ子ちゃんからの条件
ボブ子ちゃんは少し考える。
ボブ子ちゃん
 「じゃあ、一つだけ条件」

 「なに?」
ボブ子ちゃん
 「お姉ちゃんの名前を使って、お客さんを集めないこと」
 「『人気モデル来場』とか、『特別ゲスト』とか、絶対にしない」

姉はすぐにうなずく。

 「分かった」
ボブ子ちゃん
 「普通のお客さんとして来て」

 「普通のお姉ちゃんとしてね」
ボブ子ちゃん
 「それなら、いいよ」

---

9 姉妹の約束
姉が小指を差し出す。

 「私はアリーナで、ちゃんと自分の仕事をする」
 「ボブ子は大学で、自分たちのショーを作る」

ボブ子ちゃんも小指を絡める。
ボブ子ちゃん
 「どっちも途中で投げ出さない」

 「それから、お互いの舞台をちゃんと見る」
ボブ子ちゃん
 「お姉ちゃんの出番、見られるかな」

 「舞台袖からでも、見ててよ」
ボブ子ちゃん
 「大学のショーでは、前の席に座ってね」

 「もちろん」

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10 ラスト
姉が急に思い出したように尋ねる。

 「ところで、ボブ子は何を着るの?」
ボブ子ちゃん
 「まだ秘密」

 「お姉ちゃんにも?」
ボブ子ちゃん
 「お客さんは、本番まで待ってください」

姉が少し頬を膨らませる。

 「普通のお客さん扱い、もう始まってるの?」

ボブ子ちゃんが初めて自然に笑う。
最後は、二人分のカップと、絡めた小指を描く。

ナレーション:
 「同じ舞台に立っても、二人の役割は違う。」
 「そして、別々の舞台になっても、姉妹の目指す先は離れなかった。」
 「一人でも、自分を見つけてくれる人のために。」

この回の役割
この姉妹だけの会話では、問題を解決するのではなく、二人がそれぞれの立場を受け入れるところまで描きます。
姉は出演を辞退せず、プロとしてアリーナに立つ。
ボブ子ちゃんは大学で、学生主体のショーを作る。

<終わり>
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