第4章 王都祭りと恋占い 其の1

使用したAI ChatGPT
風鳴りの祠から戻った翌日。

セントラリア王国の空は、昨日の遺跡の薄暗さが嘘みたいに晴れ渡っていた。

王都の大通りには、朝から色とりどりの布が飾られている。
店先には花飾りが吊るされ、屋台の準備をする商人たちの声が飛び交っていた。

焼き菓子の匂い。
香草肉の焼ける音。
音楽隊の笛と太鼓。

いつもの王都より、ずっと賑やかだった。

「すごい……!」

冒険者ギルドの窓から外を見たセレスティアは、ぱっと顔を輝かせた。

「今日、お祭りだったんだ!」

「知らなかったのか?」

隣でレオンがパンをかじりながら言う。

朝からギルドの食堂で、彼はもう二個目のパンを食べていた。

セレスティアは振り返る。

「昨日は遺跡で走ったり滑ったり戦ったりしたから、完全に忘れてた」

「滑ったのは俺も忘れたい」

「でも無事だったじゃん」

「無事だったけど、背中はまだちょっと痛い」

「治す?」

「いや、平気」

セレスティアはじとっと見る。

「またそれ言う」

レオンはすぐにパンを置いた。

「違う違う。本当に平気。今回は血も出てない」

「そういう問題じゃないんだけど」

「じゃあ、あとで確認してくれ」

「うん。あとでね」

自然にそう言ってから、セレスティアは少しだけ目を瞬かせた。

レオンも一瞬黙る。

昨日までは、怪我を見つけるたびにセレスティアが強引に治療して、レオンが「大したことない」と逃げる。
それだけだった。

でも今の会話は、なんだか少し違った。

「……な、なんだよ」

レオンが先に目を逸らす。

セレスティアは慌てて首を振った。

「なんでもない!」

「声でか」

「レオンのせい」

「なんでだよ」

二人がそんなやり取りをしていると、奥の調査室からミラが出てきた。

手には昨日の黒い結晶の欠片が入った小箱を持っている。

「二人とも、ちょうどいいところにいた」

セレスティアは表情を引き締めた。

「黒い結晶のこと?」

「うん。昨日の報告と、風鳴りの祠の調査結果をまとめて、王宮の魔導記録院に送った」

レオンが眉を上げる。

「王宮に?」

「この規模の古代魔力反応なら、ギルドだけで抱える話じゃないからね」

ミラは小箱を机の上に置いた。

「ただし、今すぐ追加調査に行けって話にはならなかった。王宮側も祭りで人手が薄いし、記録院の返答には少し時間がかかる」

「ってことは?」

レオンが期待した顔をする。

ミラは少し呆れたように言った。

「今日は休み」

セレスティアの目がきらっと光った。

「休み!」

「昨日、二人とも遺跡で走り回ったんでしょ。無理して次の依頼に行かれても困るし」

レオンは拳を握る。

「じゃあ祭り行けるな!」

セレスティアもすぐにうなずいた。

「行きたい!」

ミラは二人を見比べる。

「……まあ、行ってきな。王都の春告げ祭は今日だけだから」

「春告げ祭?」

セレスティアが首をかしげる。

ミラは窓の外を指さした。

「冬の終わりと冒険者の安全を祈る祭り。王都中に屋台が出て、夜には広場で灯火式がある」

レオンが笑う。

「飯もうまい」

「結局そこ?」

セレスティアが突っ込む。

「祭りの屋台って大事だろ」

「まあ、大事だけど」

ミラはふっと笑った。

「ただし、セレスティア」

「なに?」

「祭りだからって、迷子の世話、落とし物探し、怪我人の治療、屋台の手伝い、全部引き受けないこと」

「えっ」

「えっ、じゃない」

「でも困ってる人がいたら」

「休み」

「少しだけなら」

「休み」

レオンが横で笑う。

「ミラ、わかってるな」

「レオンも」

「俺?」

「セレスティアがどこかへ走っていきそうになったら止めて」

レオンは自信満々に胸を張った。

「任せろ!」

セレスティアは少し不安そうに見る。

「レオンが止める側?」

「なんだよ、その顔」

「一緒に走っていきそう」

「否定できないけど、今日は止める。たぶん」

「たぶん?」

ミラは深いため息をついた。

「……二人まとめて、あまり問題を起こさないように」

「起こさない!」

「起こさないって!」

二人の声が重なった。

ミラは小箱を抱え直し、調査室へ戻りながらつぶやく。

「そこまで揃うと逆に不安なんだよね……」

昼前。

セレスティアはギルドの更衣室で、いつもの赤いケープを羽織り直していた。

祭り用に着替えるか迷ったけれど、結局いつもの服にした。
何かあった時、動きやすい方がいい。

ただ、髪だけは少し整えた。

赤いヘアバンドをつけ直し、毛先を軽くまとめる。
腰のポーチも必要最低限にして、杖は持っていく。

休みとはいえ、杖がないと落ち着かない。

「よし」

鏡の前で小さくうなずいたところで、扉の外から声がした。

「セレス、まだかー?」

「今行く!」

セレスティアが外に出ると、廊下の壁にもたれてレオンが待っていた。

いつもの青緑のフード付き装束。
剣も腰にある。
ただ、今日は革袋が少し軽そうで、表情もずいぶん気楽だった。

レオンはセレスティアを見て、少しだけ瞬きをした。

「……お」

「なに?」

「いや、なんか」

「なんか?」

レオンは視線を泳がせる。

「いつもと同じなのに、ちょっと違う」

セレスティアはきょとんとした。

「どういう意味?」

「いや、その……髪、ちゃんとしてるなって」

「普段はちゃんとしてないみたいに聞こえるんだけど」

「違う! 今日は、えっと……祭りっぽい」

「褒めてる?」

「褒めてる」

「ほんとに?」

「ほんと」

セレスティアは少し照れたように笑った。

「じゃあ、ありがと」

その笑顔を見たレオンは、なぜか耳まで赤くなった。

「……行くか!」

「急に声大きい」

「祭りだからな!」

「関係ある?」

「ある!」

レオンはごまかすように歩き出した。

セレスティアはその背中を見て、小さく笑った。

王都の大通りは、人でいっぱいだった。

冒険者、商人、子ども連れの家族、旅芸人、騎士団の見回り。
色とりどりの旗が風に揺れ、花びらのような紙飾りが空を舞っている。

セレスティアは屋台を見回して、目を輝かせた。

「見て、焼きリンゴ!」

「肉串もある」

「甘いパンも!」

「肉串もある」

「レオン、肉しか見えてないじゃん」

「祭りの肉は別格なんだよ」

「さっきギルドでパン食べてたよね?」

「あれは朝飯。これは祭り飯」

「分類が細かい」

レオンはさっそく肉串を二本買い、一本をセレスティアに渡した。

「ほら」

「ありがと」

セレスティアは受け取り、一口食べる。

香草の香りと肉汁が広がった。

「おいしい!」

「だろ?」

「レオンが作ったわけじゃないけどね」

「選んだ俺の手柄」

「はいはい」

二人は屋台を回りながら、気になるものを少しずつ買って食べた。

焼きリンゴ。
はちみつ菓子。
香草肉。
チーズ入りパン。
冷たい果実水。

途中でセレスティアが薬草飴の屋台を見つけ、真剣に並べられた瓶を見つめる。

「これ、喉に良さそう」

「祭りでも薬草か」

「だって便利そうじゃん」

「休みだぞ」

「見るだけ」

「買うだろ」

「買う」

「早いな」

結局、セレスティアは薬草飴を三袋買った。

レオンは呆れながらも、袋を一つ持ってやる。

「荷物増やすなって」

「これは必要な荷物」

「菓子だろ」

「薬草菓子」

「ほぼ菓子だろ」

そんなふうに歩いていると、広場の端で小さな子どもが泣いていた。

セレスティアの足が止まる。

レオンもすぐに気づいて、先回りするように言った。

「ミラに言われたよな」

「でも泣いてる」

「休み」

「迷子かもしれない」

「……だよなあ」

レオンは少しだけ空を見上げる。

そして、苦笑した。

「わかった。五分だけな」

セレスティアはぱっと笑う。

「レオン、優しい!」

「調子に乗るなよ。俺も気になっただけ」

二人は子どもに声をかけた。

どうやら母親とはぐれたらしい。

セレスティアがしゃがんで目線を合わせる。

「大丈夫。すぐ見つけるから」

「ほんと?」

「ほんと。こっちのお兄ちゃん、こう見えて探すの得意だから」

レオンが驚く。

「俺?」

「冒険者でしょ?」

「まあ、そうだけど」

「任せた」

「使い方うまいな」

レオンは周囲を見回し、人の流れを読む。

すぐに、青いショールを羽織った女性が必死に子どもの名前を呼んでいるのを見つけた。

「あっちだ」

三人で向かうと、母親は子どもを抱きしめて何度も礼を言った。

「本当にありがとうございます!」

セレスティアは笑う。

「見つかってよかった」

レオンも照れくさそうに頬をかいた。

「まあ、たまたまだ」

母親と子どもが去ったあと、セレスティアはじっとレオンを見る。

「な、なんだよ」

「やっぱりレオンって、困ってる人を放っておけないよね」

「セレスほどじゃない」

「そうかな」

「そうだろ。お前、今にも三件くらい手伝いに行きそうだったぞ」

「三件は行かないよ」

「二件?」

「……一件なら」

「休み!」

セレスティアは笑った。

「はいはい」

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