梅雨の季節。季節外れの真夏日が続くなか、その日は珍しい梅雨寒の1日だった。特別なその日は、早々とホテルにチェックインすることになった。
「あんなに暑かったのが嘘みたいに、今日は肌寒いね」
灰色がかった窓の外を眺め、彼女はポツンと呟いた。その顔は、寂しそうでありながら、窓の外の風景とは、あまりに対照的だった。
暗かった一室に、明るいライトが灯された。柔らかな光がぱぁっと辺りを包み、暖めている。その色は、彼女の服に良く似合っていた。
「このお部屋、コーヒーが淹れられそうだね」
彼女はそういうと、ホテルの部屋の備え付けのコーヒーメーカーを楽しそうに見ている。気を利かせるよりも早く、
「私、コーヒー淹れてあげるね、一緒にのもう」
と言ってくれた。

「あったかいね」
彼女は少し安心したようにコーヒーを嗜んでいる。
外の流れるような梅雨の雨が、窓を絶え間なく撫で、外と内の光を受けてキラキラと輝いては流れていく。

彼女は、いつも持ち歩いている本を手に取り、静かに読み始めた。
コーヒーの香ばしい香りを嗅ぎ、優しく規則正しい雨音を聴いていると、まるで世界が止まっているかのように錯覚した。

ふと。
私は今日のことについて、なんとなく申し訳ない気持ちになった。
それが顔に出ていたのかもしれない。彼女はこちらを見ると、微笑んで言った。
「なあに?どうしたの?困った顔してさ?話聞こうか?」

呪文

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