TUNE IN ―あの夏、ラジオの向こうに世界を見つけた― SIDE A-1「はじめての一枚」【後編】

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TUNE IN
―あの夏、ラジオの向こうに世界を見つけた―

SIDE A-1「はじめての一枚」【後編】

1984年、夏。
横浜・磯子。

深夜のラジオから流れてきた、名前も知らない英国の歌。

中学三年生の蒲谷真理が手にしているのは、慌てて途中から録音した一本のカセットテープだけだった。

曲名も、歌手の名前も分からない。
音質も決して良くない。

それでも真理には、その歌をもう一度、最初から聴いてみたいという気持ちがあった。

ひとつ年上の友人・横溝由美子と、音楽に詳しい先輩・土志田亜紀に連れられ、真理は磯子駅前へ向かう。

三人が訪れたのは、古びた看板を掲げる小さなレコード店。

その名は――
「レコードのクロダ」。

棚いっぱいに並ぶレコード。
壁を埋め尽くす見知らぬ歌手のポスター。
英国盤、ニューウェーブ、パンク、ソフトロック。

真理にとっては、どの言葉もまだ意味の分からないものばかりだった。

店内には、学校やテレビでは見かけない服装の若者たちもいる。

少し近寄りがたく見える人。
外国のミュージシャンのような格好をした人。
レコードのジャケットだけを見て、何かを語り合う人。

そこは単に商品を買う店ではなく、知らない世界へ入るための入口だった。

カウンターの向こうにいるのは、小柄でよく喋る店主・黒田正志。

真理たちが持ち込んだカセットの音を聴き、黒田は曲の正体を探し始める。

パンクとは何か。
ニューウェーブとは何か。

なぜ、同じ英国の音楽なのに、バンドによってまったく違って聞こえるのか。

黒田の話を聞くうちに、真理の中で、それまで名前すら知らなかった音楽が少しずつ輪郭を持ち始める。

Public Image Ltd。
Sex Pistols。
Yazoo。

知らなかった名前の向こう側に、それぞれ異なる音と考え方がある。

そして黒田が差し出した一枚のレコード。

それは、真理がラジオで偶然出会った歌へ、もう一度たどり着くための切符だった。

けれど、中学生の真理にとって、レコード一枚の値段は決して安くない。

友人からお金を借りるのか。
欲しいものを諦めるのか。
それとも、自分のお金で買える一枚を選ぶのか。

初めて自分で選び、自分のお金で買ったレコード。

その一枚が、少女の部屋と遠い英国をつなぎます。

音楽を聴くことが、その人の自己紹介だった時代。

今のように検索すればすぐ答えが出る時代ではないからこそ、誰かに尋ね、店へ足を運び、棚を探し、自分だけの一枚に出会う。

SIDE A-1「はじめての一枚」後編。

ラジオの向こうにあった遠い国が、その夜、初めて真理の部屋までやってきます📻💿🇬🇧

作品の感想や、気になった登場人物、続きで見てみたい1980年代の風景など、どんなコメントでも大歓迎です。

当時ラジオを聴いていた方、レコード店へ通っていた方、初めて自分のお金で買った一枚を覚えている方は、ぜひその思い出も聞かせてください。

※本作は、1984年前後の音楽・文化・横浜の街の空気をモチーフにしたフィクションです。
※登場人物および「レコードのクロダ」、店主の黒田正志は架空の存在です。

※作中には実在する音楽家・バンド名が登場しますが、物語自体は創作です。

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