魔王軍の援軍もあり、無事乗り切れた幻刃達は、感謝の食事を振る舞っていた。
兵士A「野営でも良かったんだが?」
宮司「いいえ、左様な事は...此度は大変助かりました故に」
危険地帯で野営し、対応予定だったのだが、思わぬ歓待に応じる魔王軍の精鋭たち。
幻刃「あら?あの方は?」
その中に執事は居なかった。
兵士A「まほ!お疲れ様。あの方っち誰ね?」
幻刃「月美ちゃん達の執事さんですけれど...五条坂だけでなく、政庁遺跡の対応までして頂けたので...」
兵士A「💦ああ、あいつか?ええとやね💦」
兵士B「ラーヴィなら宿舎ばい♪なんかしらんけど」
幻刃「ありがとうございます♪お礼まだでしたので」
そそくさと幻刃は宿舎へ向かう...
兵士AはBを「なし言うとや!まほと執事君ば合わしたらイカンち言われとろーもん!」としばき倒す。
湯浴みで身を清め、部屋に戻ると人の気配がする...
入るとそこには料理を携えた幻刃が座っていた。
執事「望月幻刃?これは一体?」
②
幻刃「此度は援軍の参戦、誠にありがとうございます」
先ず深々とお礼をする。
執事「主命故に、感謝は現場の皆と、主様だけで構わない...それに僕は貴女と接触禁止を命じられている」
幻刃「??それは何故??」
執事「さぁ?僕は皆目見当無いが...」
仕草や姿は見えないが、本当に分かっていないのが幻刃には伝わった。
幻刃(そういえばこの人、月美ちゃんに葵、椿咲、ミントの4人と四つ叉してるのよね?)
なんとなく察した。つまり、周りは自分と執事もそうなる危険性があるのを危惧している?
③
幻刃「馬鹿馬鹿しい...」
呆れてため息と、なんだか溜まっていた鬱憤も一緒に吐き出た。
執事「怒ってるのか?」
幻刃「周りの過保護に...でも、今日は自らの力不足にも...正直不満は大アリですけど?」
執事「あまり気負うな。あの量は異常だ。何かがこの地に起きる予兆かもしれない」
幻刃「アナタにそれを先に言われるのも癪。分かってる。今までにない事だと」
若干、敵意が滲み出る。無自覚な気遣いだろうが、今の自分には逆撫でにしかならない。
......でも何故だろう?最初はお礼に来た筈なのだが...
④
執事「望月幻刃?大丈夫か?」
少し考え込んでいた?優しい気遣いを感じる...
幻刃「...すみません、失礼な気配を出してしまい...」
執事「構わない。慣れている」
幻刃「...最近うまく身体が使えず、正直イライラしていましたし、アナタに当たっても仕方ないのですが」
執事「それも構わない。しかし、その不調は然るべき診査を受けるべきだろう」
なんやかんや、差し出された食事を平らげた執事。
執事「とても美味しかった。ご馳走様」
幻刃「お粗末様です」
そっと手を添えてお辞儀をする。
執事「明日も前線に出させてもらう。貴女は無理せず、後方から指示でもいいが、休養なり、身体の診察も受けると良い」
幻刃「休みませんよ。任せきりで仕舞いたくありません」
食器を片付ける執事。手慣れた動きを空気から感じる。
執事「無理はするなよ?月美様も心配されていた」
幻刃「お気遣いアリガトウございます」
執事「さっきみたいに、毒なら僕に吐けばいい。貴女の中に毒の種が見える...」
⑤
幻刃「種...?」
執事「自覚無いかもだが、今までは霊力で抑えられてたんだろう。貴女の体内に毒の種がある。僕なら毒の耐性はあるから、遠慮なく吐き出せ。浄化もしておく」
吐き出せ?自分の毒を?
多少自覚はあった...毒を振りまかぬよう気を使っていたのは。
通常は微弱な毒だが、霊力が枯渇した今は高濃度になってしまい、一般人には命に及ぶ毒性を誇る。
だが、吐かなければ身体が持ちそうにない...悔しいが、執事助言に従わざるをなさそうだ...
だが、この助言は、とても救われる...
幻刃「すみませ..ん...ダメなときは抑えますから」
執事「結界は張った、外には漏らさん。構わず吐けばいい」
幻刃「!?すみません...」
多少だが毒を吐き出し、最後は穏やかになった幻刃だった...