絵を描いてほしいと頼まれ、彼はずっと筆を持って、古今東西の芸術に影響を受けながら今日も説話などを筆にしたためて、冬の寒さに感じている思いや気持ちを綴っている。
「除夜の鐘が鳴るときは、寒さゆえか、暖かいときに抱く暑苦しさとは異なり、音がまっすぐに届いてくる、善きことも悪しきことも心に作用していって何とも嬉しきことかな…悲しきことかな…」
彼は作品を書き終えると、
フジニャ山を見て、
懐かしき光景に思いを馳せる
鐘が鳴るごとに髪の毛という煩悩
が無くなる…幼き頃に、
寺に預けられた。
どうやら、彼の心にある、
物の怪の類いが苦しめていたらしい。
親たちは、このままでは、
虎になってしまうのではないかと危惧し、
和尚に預けて
「どうすればよいのでしょう」
「では、和尚和ください、さすれば、心の乱れより解放されることでしょう」
両親たちは彼の手を握り
和尚の言う通りに、眼を瞑り
座った。
鐘が鳴る、鐘が何度鳴ったのか
和尚がうつごとに、
煩悩という名の髪の毛を
抜けさせ、彼の心を引き締めさせた。
そして、現在、先代の和尚の寺を継ぎ
朝安鳥法師として、フジニャム寺にて
人々の心にある苦しみを芸術によって
晴れさせ、文化振興に努めていた。