小説『ニャワバリ街道』【ニャンノ世界】

【絵物語】
『ニャワバリ街道』

人類はミクロ、都市の景観はマクロであり、人々の意識の集合知が
都市の外郭および内面を可視化させる。

シズクは晴天アポカリプスと共に進んできた都市、ニャワバリの街を愛していた。

「視点、この風景が好きニャリ」

フィクサーの視点に話す
徒然シズク、

一時は荒廃し、三勢力三つ巴による混沌によって、人々の心は荒み、黙示録となって、苦しんだ末の戦場…

〈反抗作戦〉は芯夜境戒にとっては…諦めの悪いものに見えたかもしれない…だが、黄昏梟として、
積み重ねた意思の延長線が、

復興であり、軌跡であり、反抗であった…

其は、単なる想像上の産物を越えた世界像を構築させる出来事であった。

〈晴天アポカリプス〉

〈黄昏梟〉

そして、〈旅人〉や〈越夜隊〉

〈黄昏梟〉視点における
〈晴天アポカリプス〉は

絶望から始まる物語であった…

「話せば長くニャル話だにゃ」

「だな…」

拠点ゼロから始まり、
旅人陣営の数の多さに圧倒されども、スカイベネトレーター奪取するために、機動兵器BRが投入されたこと、数多の戦車、歩兵が旅人を蹴散らさんと向かったことは大きいものであった。

晴天アポカリプスでは
奮戦むなしく、敗北し、

越夜隊の勝利に終わるものの…

その歴史、敗北への歴史こそが
悔しさを呼び覚まし、
現在の〈ニャンノ世界〉に
彩りを添えたことはいうまでもなかった。

そして、今、現在、
ニャンノ世界の構造は変わりつつあり…

「今は以下に世界を構築するかの質が大事だなと思うようになったニャ」

「なるほど…」


単なる生成は言葉を学び、ボタンを押せばできることだ。

しかして、其が次なる物語を生み出すだろうか。

単なる生成は生成のままに完結してしまう。

だが、物語があれば、世界たるものが存在せしえたら…

そう、〈反抗作戦〉が
アミガルズとしての戦いの続きを呼び覚ました。

秘密結社シャドウズが厄災への対抗手段を発足させた。

才色協会が、黄昏梟の形となった。

聖教会が、〈反抗作戦〉への狼煙をあげた。

数多の組織の誕生が、
この世界、ニャンノ世界には在るのだ。

「探偵機関TruthEyesからは怪奇事件の報告で、怪異黙示録のリストが更新されているらしいぞ」

「怪注時計局の調査員さんは元気かな」

「摩訶不思議食堂で食ってるんじゃないか」

怪異から生じた物語、
ドラマが深夜食堂に進化の歴史を生じさせた、
言葉の交流が、発想への潮流を生み、世界を構築させていく…

朧気だった記憶が、確かな足跡となって紡がれる空想世界

「にゃあ、視点、」

「なんだ、シズク」

日々、変化し続ける世界の歴史…

過去、現在、未来

ニャンノ世界は
現在から未来の話

黎都路時代 、黎環時代、
終末事変、暗黒時代

→ネコニャリ時代に至る

「にゃんだか、猫神ニャンノが綴る音が聞こえるにゃり」

耳を澄ます視点

「いや、何も聞こえないな」

「嘘にゃり、本当に聞こえたにゃり」

ぷーと頬を膨らますシズク
さながら、風船である。

視点は、笑う

「フグみたいだな」

「他の子に浮気した、あの学園の時のことは忘れないニャリ」


「うっ…それは、確かにごめんな」

ちちぷい学園、魅力的な子がいて、浮気してしまった彼がいた。

今は、大切な存在は近くにいることに気付き、前へと歩みを進めている。

その姿をジェネリック・ネコノは見つめていた。

猫人形として…

道は綺麗なものではなく、
過ちを繰り返しながらの足跡であった。
その度に気付き、その度に自らの闇というものに気づいた。

完璧な存在などなく、
自らも不文律な存在なのだと

猫人形は、過去の歴史に存在せし残像であり残響の心狂に語りかける。

怪異ーそれは、数多の無意識下に生まれしシャドウー

表の華やかな領域とは異なる
裏の中に隠れた存在が表出した姿…

言語化されていない存在の歪み

芯なる影

月夜が照らす街を見て、
徒然シズクは思うた。

人それぞれに街があるのだと、

互いの領域が表出したものが
写真であり、絵であるのだと、

店内の壁に飾られた

猫人形と笑劇仮面の絵や
猫人形とハロウィンの絵といった
奇々怪々なアートから感じるのだった。

ジャック・ウォー・サンター
に関する報道がテレビに映し出される。

「名前無くて、存在は無い…か」

「哲学にゃりね」

「ふと、思い浮かんだんだ」

視点という名前、
徒然シズクという名前、

「名前が無かったら、どんな感じになってたんだろうな」

単なるスーツの男、
単なる白い猫耳、

これ以上、生成することのない
ものになっていたのかもしれない。

「きっと、神様ってもんは、名前を付けることが面倒くさくなったから、見なくなったんだよ、きっと、それらを天使や悪魔に…、難しいにゃり～」

「時おり、シズクや自分が運命の中に操作されてる気がするよな」

「わかるニャ、選んでるようで、実際は選んでないような感じがね」

酒が進み、食が進む、
ポテトサラダがうまいという話やスガニャキヤラーメンはニャイチのソウルフードだとか、
色んな話をするうちに

夜は深まっていく…

「話をしてると、時間があっという間にゃりね」

「そうだな、世界の命運を決めるという話だったら、こんな長くはなってないんだろうな」

窓の外を眺める
シズク…季節は冬へと移り変わる

「にゃあ、視点」

「なんだ、猫」

「企画の上限も決まったらしいにぇ」

「そうなのか…」

頷くシズク…

「1ヶ月も待つ必要がでたにゃりよ」

「1ヶ月5回らしいな」

電子手帳の検索機能を使い
地治釜委からの発表を報じるニュースを見た。

「これは、一つ、一つを大切にしないとな」

「そうにゃりね」

さりげない話、大事な話、
ほっこりする話、
憤った話、
さまざまな感情が行き交う様は
路面電車である。

青き月が街を照らす、

其処には、歴史的な顔を覗かせたり、川辺には街を定義付ける、結界を構築する塔が存在し、厄災から街を守護している。
空中には戦艦や巡洋艦、はたまた、輸送船、あるいは、旅艦、
美術艦といった、武装した建造戦艦が空に浮かぶのは…

黎環時代にはなかった
〈非日常〉が
ネコニャリ時代には
〈日常〉となっていた。

蒸気車に乗りし文化人もいた。
道には様々な者がいる。

映らなくとも、確かに在る
領域、その領域が、
集まって、今がある。

「これからも、色んな風景を見たいね」

「まぁな、おっと、怪人〈怪造人幻〉関連の事件だ」

「疑陣探偵がニャワバリにもいたらにゃあ」

「ニャワバリはニャワバリ、帝都は帝都だ、車両をネコノテが派遣してくれたらしい、向かうぞ」

準備が早いのか、すでに
シズク専用の白い装甲車が勇ましくやってきた。

「ヴァイスティガー、格好いいよな」

「ふふん、色んな名前に付けてるニャリ」

自信満々なシズクだ。

「さてと、向かうか、シズク」

「にゃり！」

ニャワバリに事件が起きぬことはなく、常に怪異や厄災が
生じている。

だからこそ、
アミガルズや才色協会は、
存在し、
芯夜境戒や犯罪結社クライシズ、
夢幻厄災、全国悪人面集会といった存在と対峙しつつ、事件を解決しようと奮起していた。

完璧なる都市はなく、
ユートピアの実行は不可能

しかして、ディストピアたるものもまた、ユートピアと同様で、

曖昧な境界線のなかで揺らめく様は灯火の如く摩訶不思議なものであった。

君の世界は、数多の世界は、

太陽と月を繰り返しながら、

戯曲を紡いでいるのだろうから…
個性たるものはあるのだろう

一瞬、刹那たるやドラマたるものや！

未完でもよい、

世界は確定的たる答えなど
ないもので、

考えの根元への大いなる潮流は

脳の中にて世界はあるのやもと

猫神ニャンノの元に
デウスエクスマキナが降臨し、
ここで物語に幕を降りる。

其が、猫神ニャンノの考える信条であり信念であった。

考え続けることが
領域を広げる道標と成ることを…