美月お嬢様の華麗なる食卓 五食目

使用したAI Stable Diffusion
放課後の学園カフェは、文化祭の余韻も残る賑やかさに包まれていた。制服姿の女子たちが集まり、甘い香りの漂うドリンクを片手に談笑している。

「美月様も一緒にどうですか? 新作の黒糖タピオカですよ!」
友人のひとりが差し出したカップを、美月お嬢様は冷ややかな眼差しで見下ろした。

「まあ……この黒い球体をストローで吸い上げるなど、理科の実験ではありませんこと? 液体に沈む黒真珠、まるで観察用の試料ですわね」

女子たちは「また始まった」とばかりに苦笑したが、勧める手は止まらない。
「でもすっごく美味しいんですって! 一口だけでも!」

渋々、太すぎるストローを手に取った美月。
「まるで槍のようですわね……淑女が口にする道具ではありませんこと」
そう言いつつ、意を決して吸い込んだ瞬間――

「……な、なにこれっ!?」

舌に衝撃が走った。ぷにぷに、もちもち、まるで月の衛星が跳ね返るような弾力。
さらに黒糖の甘みがミルクティーの海に溶け、口内は一気に天文現象へと化した。

「ふ、ふわぁ……! 甘きミルクの大海に、星々が沈んでいきますわ! これは……銀河の舞踏会……!」

友人たちは思わず吹き出した。
「美月様、めちゃくちゃ気に入ってるじゃないですか!」

しかしお嬢様は慌てて背筋を伸ばし、冷静を装う。
「こほん。わたくしは流行に迎合しているわけではありませんの。ただ……庶民文化の観察をしているにすぎませんわ」

その口調とは裏腹に、ストローは止まらなかった。
――もちもちとろり、もちもちとろり。
気づけばカップの底に氷だけが残されている。

「……あら? もう無いのですの?」

一瞬の素に、友人たちは笑いをこらえきれなかった。

最後に美月はわずかに頬を染め、ふいと視線をそらす。
「……まあ、庶民の嗜みも、たまには悪くありませんわね」

そう呟く声は、どこか甘くとろけていた。

呪文

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