ベンビスティーの戦いでトッテとペロールが処刑され、未亡人となったバルアーン候夫人ルイーズは領主の代行として重責を引き継ぐこととなった。
彼女に降りかかる責任は重く、領主の代行として、領地を守らなければならないという圧力に押しつぶされそうになっていた。
バルアンの軍は戦場でその多くを失い、城に戻ってきた兵士たちは心身共に疲弊していた。加えて、領内の官吏や守備隊は次々と辞めて逃げていき、バルアン城は徐々に機能不全に陥っていった。
ルイーズは次第に孤立していき、精神的にも追い詰められていく。
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秋
アクサンの地ティバでは、大王ヌーカの王女エンナが行方不明になるという事件が発生し、ティバ領内での捜索が行われることとなった。
ティバの領内ではほかにも子供たちが行方不明になっていた。
捜索をバルアンにも広げたところフラール人の間でも行方不明事件が起きていた。
聴けば、バルアーンの未亡人ルイーズが子供たちをさらって食べているという恐ろしい噂が広まっている。
「バルアーンの魔女」と呼ばれ、もう城を守るものもほとんどいないという。
実際、当時バルアーンで起きていた犯罪件数は異常な治安の悪化を示していた。
エンナ王女はバルアン城に囚われているかもしれない。
報告はプローサ将軍の耳に入った。
バルアーンの城は官吏や兵士が姿を消し、守備隊も機能していないという報告が相次いでいた。
領内の警察機能が停止し、犯罪の増加は看過できないほどに達していたため、
将軍はバルアン城への介入を決定する。
プローサがバルアン城に向かう中、ルイーズは精神の崩壊を深めていた。彼女は、自らの心の傷を癒すために次々と子供たちをさらい、城内に「子供部屋」を増設し続けていた。エンナ王女もその一人として囚われ、ルイーズにとっては外交交渉の材料ではなく、自分の孤独を埋める存在として扱われていた。
バルアン城突入とルイーズの最期
プローサは、部下とともにバルアン城に突入し、機能停止した城内を目の当たりにする。子供たちの笑い声が響く中、ルイーズはまるで何事もなかったかのように微笑み、子供たちと過ごしていた。しかし、彼女の目には狂気が宿っており、現実と幻想の区別がつかなくなっていた。
プローサは最後の決断を迫り、ルイーズを討つことになる。
彼はベンビスティーの戦いの前に見た精霊の予徴が、この瞬間に向かっていたことを感じ取った。
ルイーズが倒れると、城内に張り詰めていた狂気もようやく解かれ、静寂が訪れた。
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そして、エンナ王女は無事にアクサンの地ティバへ帰還する。
彼女は
「朋有りて、また良くして賜ふた令女あり、すぐにもまた行くべしと思ふ」
と語った。
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バルアン城はアクサンの支配下に入り、プローサ将軍はバルアーン領臨時総督として事態の収束に当たることとなった。
ルイーズの悲劇的な結末は、フラール全体の混乱を象徴する出来事となった。
プローサは、精霊の予徴によって導かれたこの一連の出来事に対し、内心で深い苦悩を抱えつつも、その役目を果たしたのであった。
ベンビスティーの戦い
https://www.chichi-pui.com/posts/2c11a2c7-f924-4be5-9fad-fdbe1ca18199/喪服のルイーズ
https://www.chichi-pui.com/posts/1c658905-c218-44d5-bcaf-599216d48c64/バルアーンの魔女
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