殞地の姫武者

ランダム３ワード生成です♪

【今回のお題】
・蟹(clab)
・廃人(wreck)
・武士(samurai)

【修正箇所】
・wreckには難破船という意味があり、難破船が出てきてしまうので別のプロンプトで再現(sick, empty eyes, sweaty face)
・武士の服装に変更。
・背景を屋外(outdoor)に変更。

【ショートストーリー】

和藤家の城下は血と焦げた土の臭いに満ちていた。先の戦で当主・和藤蘭助が討ち死にし、家臣たちは混乱の中で未来を模索していた。蘭助の一人娘、20歳の和藤蘭千代は、和藤家最後の血筋だった。彼女は誰もが目を奪われる美少女で、白い肌に長い黒髪が風に揺れ、大きな瞳には気品と儚さが宿っていた。母・月光院は蘭千代が5歳の時に病で逝き、彼女は幼くして孤独を背負いながらも、父の死後は一族の命運を担う存在へと成長していた。

蘭助が健在だった頃、蘭千代の記憶には温かな日々が刻まれていた。ある春の日、蘭助は当時11歳の娘を膝に抱き、庭の桜を見ながら言った。「蘭千代、お前は和藤家の誇りだ。強く、優しく生きなさい。」その隣で、忠臣・猿渡忠信が笑顔で頷いた。「殿の言う通りだ。わしがそなたを守り、教え導くよ。」忠信は蘭千代に木刀を握らせ、庭で剣術の手ほどきをした。彼女が転ぶと、大きな手で支え、「泣くな、蘭千代。立ち上がるたびに強くなる」と励ました。あの頃の忠信は、父の影であり、蘭千代にとっての大きな柱だった。

だが、蘭助の戦死で全てが変わった。蘭千代が19歳の時、父が戦場で命を落とし、家臣団は次の当主を決めるため、城の大広間に集まって議論を始めた。重臣たちは円陣を組み、声を荒げた。忠信が立ち上がり、「蘭千代様は蘭助殿の血を引く正統な後継者だ。彼女を当主に立て、和藤家を再興すべき！」と主張した。若手家臣たちが賛同の声を上げたが、古参の重臣・蟹江剋秋が冷笑を浮かべて口を開いた。「女に何が出来る？和藤家は儂が守るのが筋だ。」剋秋は60を過ぎた老獪な男で、鋭い目つきと脂ぎった顔が不気味な印象を与えた。彼は蘭千代をじろりと見つめ、その視線にはいやらしい欲望が滲んでいた。

議論が白熱する中、剋秋はさらに言葉を続けた。「蘭千代様が美しき姫であることは認めよう。だが、当主として戦を率いるには力不足だ。和藤の血を絶やさぬため、ワシが蘭千代様に子を授けて差し上げよう。それが最善の道だ。」その言葉に、忠信が激昂した。「何！？剋秋、貴様、蘭千代様を汚す気か！」忠信は刀に手をかけ、若手家臣たちも立ち上がって怒声を上げた。「下劣な！」「蘭千代様を侮辱するな！」大広間は一触即発の空気に包まれたが、剋秋は薄笑いを崩さず、「怒るなよ。儂は和藤家のためを思ってのことだ」と言い放った。結局、忠信派の勢いが剋秋を押し切り、蘭千代が当主に指名されたが、この会議で家臣団の亀裂は決定的となった。

剋秋との因縁は、蘭千代が16歳の時に始まっていた。ある夏の日、蘭助が遠征で城を留守にしている隙を狙い、剋秋は蘭千代を裏庭の物置小屋に呼び出した。「蘭千代殿、儂と話したいことがある」と低く囁き、彼女を強引に連れ込んだ。小屋の中で、剋秋は蘭千代の白い腕を掴み、いやらしい目で彼女を見下ろした。「お前のような美人が和藤を継ぐなど勿体ない。儂のものになれば、楽に暮らせるぞ。」蘭千代は恐怖で震え、「離してください！父上に言います！」と叫んだが、剋秋は嗤った。「蘭助には分からんさ。ここには誰もおらん。」彼女は必死に抵抗し、小屋の戸を蹴破って逃げ出した。以来、剋秋の視線は彼女にとって悪夢となり、心に深い傷を残した。

蘭千代が当主になると、家臣団は分裂し、蘭千代派と剋秋派が刃を交えた。剋秋は蘭千代を「女ゆえに弱い」と嘲り、自らが実権を握ろうと画策した。20歳になった蘭千代は忠信の指導の下、甲冑を纏い陣頭に立った。初めての戦場で、彼女は震える手で刀を握り、忠信に尋ねた。「私に…本当に務まるのでしょうか？」忠信は優しく、しかし力強く答えた。「そなたには蘭助殿の魂が宿っておる。恐れるな、わしがそばにいる。」その言葉に励まされ、蘭千代は懸命に戦った。戦況は一進一退を繰り返し、蘭千代派は幾度か勝利を収めたが、剋秋の狡猾さは底知れなかった。

ある日、剋秋が偽の降伏を装った使者を送り込んだ。忠信は疑念を抱き、「蘭千代様、わしが見極める。下がっておれ」と命じた。だが、使者が近づいた瞬間、森から伏兵が飛び出し、忠信を囲んだ。蘭千代は叫んだ。「忠信殿、戻って！」しかし忠信は敵を斬り伏せながら彼女を庇い、最期に剋秋の放った矢に胸を貫かれた。血に染まった忠信は蘭千代の腕に倒れ、かすれた声で呟いた。「蘭千代…すまぬ…そなたを…守れなかった…」そして息絶えた。

「忠信殿！私が、私が罠を見抜けなかったから…！」蘭千代は泣き崩れた。彼女の美貌は涙に濡れ、なおさら儚く見えた。忠信を失った罪悪感が、彼女の心を蝕み始めた。戦況は一気に剋秋派に傾き、家臣たちは次々と討たれ、蘭千代の陣は孤立した。

数日後、蘭千代は川辺に陣を敷いた。疲れ果てた彼女は、川のせせらぎを聞きながら母・月光院の子守唄を思い出した。「お母様…私、どうすれば…」と呟く彼女の足元に、小さなサワガニが這ってきた。その赤黒い姿が、剋秋の脂ぎった顔と16歳の時の悪夢を連想させた。「蟹江…剋秋…お前が…お前が全てを奪った…！」蘭千代の声は震え、瞳が揺れた。忠信の死、父の不在、家臣の裏切りが一気に押し寄せ、彼女の心は限界を超えた。彼女は刀を落とし、川を見つめたまま動かなくなった。家臣が駆け寄り、「蘭千代様！」と叫んだが、彼女の目は虚ろで、表情は消えていた。かつての気品も勇気も失せ、蘭千代は感情を無くした抜け殻と化した。

戦は剋秋派の勝利に終わった。剋秋は蘭千代を捕え、屋敷に幽閉した。「和藤の血を絶やすのは惜しい。子を産め。それがお前の役目だ」と冷たく告げた。蘭千代は何も答えず、ただ虚空を見つめた。彼女の美貌はなお輝いていたが、その瞳に意志はなかった。剋秋は彼女の白い頬を撫で、「これほどの美人を手に入れたのだ。和藤家は儂のものだ」と嗤った。

数年後、蘭千代は剋秋の子を産んだ。陣痛の中、彼女は無言で耐え、子が生まれた瞬間も目を閉じたままだった。剋秋は子を抱き上げ、「和藤と蟹江の血を継ぐ子だ。良き道具になる」と笑った。蘭千代は子に触れず、名を尋ねることもなかった。彼女の心は川辺で砕け、母としての感情すら失っていた。剋秋は満足げに蘭千代を見下ろし、「お前は儂のものだ。永遠にな」と呟いたが、蘭千代の魂はすでに還らなかった。和藤家の血筋は存続し、現代へと受け継がれていくのだが真実は剋秋によりねじ曲げられ、子孫へと伝えられることは無かった。