「……ふふ、ふふふ。誰も見ていない。今の私は、透明人間も同然です」

メイドのアンナは、テーブルに並んだ色とりどりのマカロンを前に、怪しく鼻をひくつかせていました。そこへ、窓の外を通りかかった庭師が、ハサミを止めて声をかけます。

「おい、そこ。お前の『透明人間』、窓越しに丸見えだぞ」

「ひゃうっ!?……な、なんですか庭師さん! 心臓がマカロンの形になって止まるかと思いましたよ!」

「どんな止まり方だよ。それよりお前、またつまみ食いしようとしてるだろ」

アンナは慌てて両手で頬を押さえ、精一杯の「無実な顔」を作りました。

「失礼な! 私は今、このマカロンたちの表面にヒビが入っていないか、至近距離で検品していただけです。ほら、このピンクの子……私に食べてほしそうな顔をしています」

「マカロンに顔なんてついてないだろ。お嬢様にバレたら、また廊下の雑巾がけ十往復だぞ」

「……うっ。それは厳しい。でも見てください、この絶妙な焼き色。きっとサクッとして、中はしっとりして……あぁ、想像しただけで脳内がマカロン祭りに!」

「よだれ拭けよ。……まあ、一階のキッチンで余り物があるって料理長が言ってたぞ」

その言葉を聞いた瞬間、アンナの目がカッと見開かれました。

「なんですって!? それを早く言いなさいよ! 私は今から光の速さでキッチンへ向かいます。お嬢様の検品は……後回しです!」

「……おい、走るな! 転んで皿を割るなよー!」

嵐のように去っていくアンナの背中を見送りながら、庭師は「あいつの食い意地だけは、どんな基準でも満点だな」と呟き、やれやれと首を振って作業に戻るのでした。

呪文

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