「……おい。おい、起きろ。こんなところで寝ていたら、明日の新聞の表紙が『行き倒れの聖女』になっちまうぞ」

呆れた声を上げながら、幼馴染のカノンが、地面に大の字で寝転んでいるセラの頬をつつきました。セラは銀色の髪を芝生に広げたまま、薄く目を開けます。

「……んん。あ、カノン。……静かにしてください。今、私は大地のエネルギーを急速充電中なのです」

「充電中って……ただの昼寝だろ。聖女が草むらで口を開けて寝るなよ」

「失礼な。これは『光合成』という高度な儀式です。太陽の光をドレスに浴び、地面から微量な栄養を摂取することで、私の魔力は今、限界突破しようとしています……ぐぅ」

「寝るな。魔力じゃなくて、さっき食べた特大オムライスの消化に全エネルギーを使ってるだけだろ」

セラはむくりと起き上がると、ドレスについた草を払いながら、真剣な顔でカノンを見つめました。

「カノン、よく聞いてください。この花たちは私に言いました。『セラ様、あなたの重みで腰が痛いです』と」

「謝れよ。花に謝れ。……ほら、早く戻るぞ。おやつにアップルパイが焼き上がるって、司祭様が言ってた」

その言葉を聞いた瞬間、セラの目がシャキーンと輝きました。

「なんですって!? カノン、それを早く言いなさい! 聖女として、焼き立てのパイを冷ますわけにはいきません。光合成、終了です。全速力で帰還しますよ!」

「さっきまでの神秘的な空気はどこに行ったんだよ……」

先ほどまでの「大地の精霊」のような美しさはどこへやら、パイを目指して猛ダッシュするセラを追いかけながら、カノンは深くため息をつくのでした。

呪文

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